一般的なよくある質問
不動産鑑定士は「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づき制定された国家資格者であり、弁護士、公認会計士と並ぶ文系三大国家資格に位置づけられています。
不動産の経済価値に関する専門家として、鑑定評価だけでなく、土地の有効活用や不動産投資分析などの高度なコンサルティング業務も行います。当事務所では最新の市場動向を踏まえた精度の高い評価を提供しています。
不動産鑑定士は中立・公平な立場から専門的知識と経験に基づいて不動産の価値を評価します。当事務所の鑑定評価書は以下のような場面で大きなメリットがあります。
- 売買取引での適正価格の把握と交渉力の強化
- 相続税申告時の適正評価による税負担の適正化
- 担保評価における金融機関との交渉材料
- 訴訟や調停における有力な証拠資料
- 資産評価の適正化による経営判断の支援
特に重要な取引や判断の場面では、専門家による客観的な評価が大きな安心と自信につながります。
鑑定評価書は不動産鑑定評価基準に完全準拠した公的な証明力を持つ成果物です。一方、簡易評価書は基準に完全には準拠していない参考資料となります。
【鑑定評価書の特徴】
- 法的な証明力があり、裁判所や税務署への提出が可能
- 詳細な市場分析と複数の評価手法による精緻な価格算定
- 第三者への開示・説明に耐えうる客観性と信頼性
【簡易評価書の特徴】
- 短期間・低コストで取得可能
- 内部検討資料や概算把握に最適
- 限定的な調査に基づく参考価格の提示
ご利用目的に応じて最適な評価書をご提案いたしますので、まずはご相談ください。
不動産会社の査定と鑑定評価には以下のような重要な違いがあります。
【不動産鑑定評価】
- 国家資格者による中立・公平な立場からの評価
- 法的な裏付けと証明力を持つ
- 複数の評価手法を用いた科学的・体系的な分析
- 詳細な市場調査と類似取引事例の分析に基づく
【不動産会社の査定】
- 仲介サービスの一環として提供される参考価格
- 売買仲介を前提とした営業的視点が含まれる場合がある
- 法的な証明力はない
重要な意思決定や第三者への説明が必要な場面では、中立的な不動産鑑定士による評価が大きな安心につながります。
標準的には実地調査から3週間程度で納品いたします。具体的な流れは以下の通りです。
- お問い合わせ・ご相談(随時対応)
- お見積り提示(1〜2営業日以内)
- ご契約・必要書類のご提出
- 実地調査の実施
- 調査後1週間を目途に概算価格のご報告
- 鑑定評価書の作成(約2週間)
- 納品・ご説明
急ぎのご依頼にも可能な限り対応いたしますので、お気軽にご相談ください。
特急対応についても、基本的に追加料金なしで最大限の努力をいたします。
基本的には以下の資料をご用意いただくと円滑に進みます。
- 登記簿謄本(全部事項証明書)
- 公図・地積測量図
- 建物図面(間取り図など)
- 固定資産税評価証明書または課税明細書
ただし、これらの資料をお持ちでない場合も、当事務所で取得可能なものは代行して入手いたしますので、まずは物件の所在地をお知らせください。
お客様の手間を最小限にするサポート体制を整えております。
鑑定評価の場合は原則として立ち会いをお願いしております。これは物件の状況を正確に把握し、より精度の高い評価を行うためです。
ただし、外観調査のみで十分な場合や、簡易評価の場合は立ち会いが不要なケースもございます。
お客様のご都合に合わせて柔軟に対応いたしますので、ご相談ください。
報酬はサービス内容によって異なりますので、詳しくは報酬規程のページをご覧ください。評価の種類や物件の特性によって異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。
【鑑定評価書】
- 一般住宅:20万円〜
- 収益物件:30万円〜
- 商業施設・工場等:40万円〜
【簡易評価書】
- 一般住宅:5万円〜
- 収益物件:10万円〜
具体的なお見積りは物件の種類、規模、立地、評価の目的などを考慮して算出いたします。透明性のある料金体系を心がけておりますので、お気軽にお見積りをご依頼ください。
全国どこでも対応可能です。当事務所では日本全国の不動産鑑定に対応しており、地方の物件でも精度の高い評価を提供しています。
一都三県(東京、神奈川、埼玉、千葉)については基本的には追加費用なしで対応しております。
その他の地域については、交通費・宿泊費を別途頂戴する場合がございますが、できる限りリーズナブルな設定とさせていただきます。遠方の物件でもお気軽にご相談ください。
基本的には成果物完成時にお支払いいただき、ご入金確認後に納品させていただいております。
お支払い方法は銀行振込が一般的ですが、ご相談に応じて柔軟に対応いたします。
なお、報酬額が50万円を超える案件の場合には、業務の安定的な遂行のため着手金を頂戴しております。
詳細な支払条件については、お見積り時にご案内いたします。
鑑定評価を取るメリット
不動産売買において鑑定評価書を取得することで、以下のようなメリットがあります。
- 適正価格の把握: 市場価値を客観的に把握でき、過大評価や過小評価を防げます
- 交渉力の強化: 第三者の専門家による評価額があることで、価格交渉の根拠として活用できます
- 意思決定の確信: 重要な投資判断を行う際の確かな裏付けとなります
- リスク軽減: 将来的なトラブルを未然に防ぐ効果があります
特に高額な取引や特殊な物件の場合、鑑定評価書の取得は大きな安心につながります。費用対効果の高い投資としてご検討ください。簡易評価書(5万円〜)でも十分な判断材料となる場合もありますので、ご予算や目的に応じてご相談ください。
不動産が絡む財産分与において鑑定評価書を取得することで、以下のようなメリットがあります。
- 公平・客観的な価格の決定: 当事者(夫婦)間で感情的な対立があっても、第三者である不動産鑑定士による公的な評価額を基準とすることで、誰もが納得できる公平な分割が可能になります。主観や希望的観測に基づく価格設定を防げます。
- トラブルの防止と早期解決: 評価額で揉めることなく、スムーズに分与の話し合いを進められます。将来的に「あの時、安すぎた/高すぎた」といった不満や争いを未然に防ぐ効果があります。
- 訴訟・調停における証拠力: 裁判所への提出資料として、非常に高い信頼性と説得力を持ちます。調停や裁判に移行した場合でも、鑑定評価額が判断の強力な根拠となります。
- 権利関係が複雑な物件の評価: 借地権、共有不動産、未登記物件など、一般の不動産業者では査定が難しい特殊な権利や物件についても、不動産鑑定士が適正な評価額を算定できます。
財産分与は当事者間の利害が複雑に絡み合うため、鑑定評価書は客観的な物差しとして機能し、法的な手続きにおいても最も信頼できる基準となります。
主な遺産に不動産が含まれる遺産分割において鑑定評価書を取得することで、以下のようなメリットがあります。
- 公平かつ客観的な価格の基準: 複数の相続人の間で感情的な対立や意見の食い違いが生じやすい状況で、第三者である不動産鑑定士による公的な評価額を唯一の共通基準とすることで、誰もが納得できる公平な分割が可能になります。相続人同士の主観や感情論を排し、公平性を担保できます。
- 無用な争い・トラブルの回避: 不動産の価値をめぐる争いは、遺産分割協議が長期化する最大の原因の一つです。鑑定評価書があれば、価格設定で揉めることなく、スムーズに協議を進め、親族間の亀裂を防ぐことができます。
- 代償分割の適切な金額算定: 不動産を特定の相続人が現物で取得し、他の相続人へ金銭(代償金)を支払う代償分割を行う際、鑑定評価額は代償金の算出根拠として必要不可欠です。客観的な評価額に基づき、適正な代償金を支払うことができます。
- 税務署への説明資料としての信頼性: 相続税の申告や、不動産の評価額について税務署から問い合わせがあった場合、国の基準に基づいて作成された不動産鑑定評価書は、非常に高い証拠力を持ちます。
遺産分割は親族間の重要な話し合いであり、特に不動産は高額で意見が分かれやすいため、鑑定評価書は公平な解決と将来的な安心をもたらすための最も有効な手段となります。
収益を目的とする投資用不動産において鑑定評価書を取得することで、以下のような投資判断に直結する重要なメリットがあります。
- 収益還元法による客観的な価値把握: 投資用不動産の評価では、将来得られる収益性(家賃収入など)に基づいて価格を算出する収益還元法が主に使用されます。これにより、単なる市場取引事例だけでなく、その物件が将来生み出す価値を客観的に把握でき、適正な購入価格(または売却価格)を判断できます。
- 融資交渉・担保価値の裏付け: 金融機関への融資申込を行う際、不動産鑑定評価書は担保価値の裏付けとして最も信頼性の高い資料となります。これにより、融資の可否、借入可能額や融資期間の交渉を有利に進められる可能性があります。
- 投資家への説明責任の履行: J-REIT(不動産投資信託)や私募ファンドなど、多数の投資家から資金を集める場合、鑑定評価書は資産価値と投資の合理性を示す公的な証拠となり、投資家への高い説明責任を果たすことができます。
- M&A・企業会計における公正な時価評価: 企業が保有する投資不動産の時価評価(特に上場企業の会計処理)や、M&A(合併・買収)におけるデューデリジェンスの際、公正な財務戦略を立てるための確固たる根拠となります。
投資用不動産は将来の収益を予測し、現在の価格が適正かを判断することが極めて重要です。鑑定評価は、その経済的価値を深く分析するため、リスクの軽減と確度の高い意思決定に不可欠です。
地代や家賃の改定に際して鑑定評価書を取得することで、以下のような賃料交渉と法的な安定性に関する重要なメリットがあります。
- 賃料の適正水準を客観的に把握: 貸し手(オーナー)と借り手(テナント)の双方が納得できる適正な賃料水準を、第三者である不動産鑑定士が客観的に算定します。これにより、感情論や一方的な希望に基づく改定要求を防げます。
- 交渉の強力な根拠となる: 賃料改定は交渉が難航しがちですが、公的な基準に基づく鑑定評価額を示すことで、価格交渉における強い裏付けとなり、スムーズな合意形成を促します。
- 法的なトラブル回避と解決: 賃料改定を巡る調停や訴訟に発展した場合、不動産鑑定評価書は裁判所に対して最も信頼性の高い証拠として提出されます。これにより、法的な紛争リスクを軽減し、解決を早めることができます。
- 特殊な条件下の賃料算定: 定期借地権、事業用定期借地権、複雑な権利関係にある建物の賃料など、一般的な事例がない特殊なケースにおいても、不動産鑑定士が専門的な手法で適正な賃料を算定できます。
特に賃料改定で合意に至らず調停・訴訟に移行する可能性がある場合、鑑定評価書は公平性と法的な説得力を確保するために不可欠なツールとなります。
親族間売買や同族間売買(会社とその役員・株主間など)において鑑定評価書を取得することは、税務上のリスク回避と公平性の確保という点で、特に大きなメリットがあります。
- 税務リスクの回避(贈与税の認定防止): 親族間や同族間では、市場価格より著しく低い価格(時価より安い価格)で売買が行われた場合、税務署から時価との差額が贈与されたものと認定され、売主または買主に贈与税や法人税が課税されるリスクがあります。鑑定評価書を取得することで、「取引価格が適正な時価である」ことの客観的な根拠となり、これらの税務リスクを大幅に回避できます。
- 公平な取引価格の明確化: 家族や親族間であっても、特定の個人への利益供与と見なされないよう、第三者である不動産鑑定士が算定した適正な価格を基準に取引を行うことで、親族間の公平性が保たれます。
- 株主・利害関係者への説明責任: 同族会社の場合、他の株主や利害関係者に対し、特定の役員との取引が会社にとって不利益ではないこと、すなわち公正な取引であったことを証明するための強力な裏付けとなります。
- 融資審査の円滑化: 買主が金融機関から融資を受ける場合、金融機関は取引価格の妥当性を厳しく審査します。鑑定評価書は、担保価値および取引価格の適正性を示す資料として、融資審査を円滑に進める上で非常に有効です。
親族間・同族間売買では、価格の恣意性が最も問題視されるため、鑑定評価書は法的な安全装置として機能し、将来の税務調査や内部紛争といった大きなリスクを軽減します。
立退料の算定に伴い鑑定評価書を取得することは、法的な正当性の確保と紛争の予防・解決という点で、特に重要なメリットがあります。
- 適正かつ客観的な立退料の算定根拠: 立退料は、単なる移転費用だけでなく、借家権・借地権の経済価値や営業上の損失、その他の補償を含めた複雑な要素を総合的に考慮して算定されます。不動産鑑定士は、これらの複雑な要素を国の基準に基づいて分析し、客観的で合理的な立退料の金額を導き出します。
- 交渉の円滑化と強力な根拠: 貸主(立退きを求める側)と借主(立退きを受ける側)の間で立退料の金額が争いになりやすい場面で、鑑定評価書は第三者の専門家による公正な金額を示すことになり、交渉をスムーズに進めるための強力な裏付けとなります。
- 訴訟・調停における証拠力の確保: 裁判所や調停の場において、立退料の金額が争点となった場合、不動産鑑定評価書は最も信頼性の高い証拠資料として扱われます。これにより、請求側・支払側の主張の正当性が担保され、有利な解決に導く可能性が高まります。
- 将来的なリスクの軽減: 適正な鑑定評価額に基づいて立退きを完了させることで、立退き後に「立退料が不当に低かった/高かった」として法的な紛争が再燃するリスクを未然に防ぎます。
立退料の算定は法律(借地借家法など)が深く関わる専門的な分野であり、鑑定評価書は法的な安定性を確保するために不可欠です。
M&A(企業の合併・買収)や事業承継において鑑定評価書を取得することは、デューデリジェンス(適正評価手続き)の精度向上と公正性の確保という点で、極めて重要なメリットがあります。
- 買収価格・売却価格の適正な算定: 買収対象企業が保有する不動産(本社ビル、工場、遊休地など)は、企業価値全体に大きな影響を与えます。鑑定評価により、これらの不動産の真の市場価値や収益価値を客観的に把握でき、M&Aにおける企業価値評価(バリュエーション)の精度が高まります。
- 公正性の担保とトラブル予防: 特に事業承継において、後継者と非後継者の間で公平な財産分配や対価の算定が求められます。鑑定評価書は、特定の相続人や当事者に不当な利益供与がないことを示す公正な証拠となり、将来の親族間・株主間の紛争リスクを軽減します。
- 財務報告の信頼性向上(会計目的): 企業結合会計や減損会計など、M&A後の財務報告において、取得した不動産を時価で評価し直す必要が生じる場合があります。鑑定評価書は、この時価評価の根拠として最も信頼性が高く、財務諸表の正確性と透明性を保証します。
- 融資交渉の円滑化: M&Aにおける買収資金調達や、事業承継後の新体制における借入の際、不動産の鑑定評価額は担保価値の裏付けとして機能し、金融機関との融資交渉を有利に進められます。
鑑定評価は、M&Aや事業承継という人生または企業にとっての一大イベントにおいて、隠れたリスクの顕在化を防ぎ、合理的かつ法的に盤石な意思決定を行うための基礎資料となります。
減損会計の適用に伴い鑑定評価書を取得することは、会計処理の正確性と財務報告の信頼性を確保するという点で、非常に大きなメリットがあります。
- 回収可能価額の客観的な算定: 減損会計では、不動産などの固定資産について、帳簿価額を回収可能価額まで切り下げる処理(減損処理)が必要になることがあります。この回収可能価額の算定において、正味売却価額や使用価値を求める際に、不動産鑑定士による鑑定評価額は最も信頼性の高い客観的な根拠となります。
- 財務報告の信頼性向上と説明責任の履行: 上場企業をはじめとする企業は、株主や投資家に対し、財務報告の透明性と正確性を求められます。鑑定評価書は、減損の有無や金額の算定根拠を公正かつ合理的に説明するための決定的な資料となり、会計監査への対応も円滑に進められます。
- 将来のリスクと減損処理のタイミングの判断: 鑑定評価を行うことで、対象不動産の市場価値や収益性の低下を専門的に分析し、減損の兆候を早期に把握できます。これにより、適切なタイミングで減損処理を行うという会計上の意思決定を確実に行うことができます。
- 税務リスクの回避: 会計上の減損処理は税務上の損金算入とは直接結びつきませんが、鑑定評価書で算定された客観的な価値は、企業の資産価値評価に関する税務当局への説明資料としても役立つことがあります。
減損会計は企業の利益に直結し、株価や信用にも影響を与える重要な会計処理です。鑑定評価書は、この処理を法的に裏付けられた専門家の判断に基づいて行うための不可欠なツールとなります。
賃貸等不動産の時価評価に伴い鑑定評価書を取得することは、財務報告の信頼性と投資家への説明責任を果たすという点で、特に大きなメリットがあります。
- 財務報告の客観性と信頼性の担保: 賃貸等不動産は、上場企業などが公正価値(時価)で評価し、その金額を財務諸表に注記する必要があります。不動産鑑定士による鑑定評価額は、この時価の算定根拠として最も客観的で信頼性が高いとされ、会計監査において揺るぎない根拠となります。
- 投資家への透明性の確保: 賃貸等不動産の時価情報は、投資家が企業の真の資産価値や収益力を判断するための重要な材料です。鑑定評価書を根拠とすることで、時価評価のプロセスと結果の透明性が高まり、投資家への説明責任を十分に果たせます。
- 適切な投資判断への活用: 企業が保有する賃貸等不動産の時価を定期的に把握することで、その不動産の収益性や市場における競争力を再評価でき、売却、建て替え、用途変更などの戦略的な投資判断を行うための基礎データとして活用できます。
- 評価の専門性への対応: 賃貸等不動産の評価は、収益還元法など、その不動産が生み出す将来のキャッシュフローを分析する専門的な手法が中心となります。不動産鑑定士は、これらの手法を用いて、賃貸市場の状況や物件の個別要因を詳細に反映した正確な時価を算定できます。
鑑定評価書は、企業会計における時価評価という公的な情報開示の場面において、その評価額が適正であることを第三者的に証明する、不可欠な根拠資料となります。
相続や税務対策において鑑定評価書を取得することは、税務署への対抗力強化と公平な財産分割という点で、特に大きなメリットがあります。
- 相続税評価額の適正化と節税効果: 不動産の相続税評価は原則として「財産評価基本通達」に基づいて計算されますが、特定の条件(広大地、容積率未消化、不整形地など)を満たす不動産については、通達に基づく評価額よりも鑑定評価額のほうが低くなるケースがあります。この鑑定評価額を税務署に提出することで、適正な評価額での申告が可能となり、結果として相続税額の軽減(節税)につながる可能性があります。
- 税務調査への強力な対抗手段: 税務調査において、不動産の評価額が適正でないと指摘された場合、国の基準に基づいて作成された不動産鑑定評価書は、評価額の客観性と合理性を示す最も有力な証拠となります。これにより、税務署からの指摘や追徴課税のリスクを大幅に減らせます。
- 公平な遺産分割協議の実現: 遺産分割の際、不動産を現物で取得する相続人と金銭で取得する相続人の間で、不動産の価値をめぐる意見の対立が生じることがあります。鑑定評価書は、第三者の専門家による公正な時価を示すため、遺産分割協議の基準となり、親族間の無用な争いを回避し、公平な分割を促進します。
- 二次相続を見据えた対策: 鑑定評価を行うことで、将来的に発生する可能性のある二次相続も含めた総合的な相続対策を検討するための、より正確な財産状況の基礎データを把握できます。
相続・贈与における不動産評価は、税務署との見解の相違が生じやすい分野です。鑑定評価書は、合法的な節税の根拠と法的な安定性を確保するために重要なツールです。
鑑定評価を依頼するケース
弁護士が不動産鑑定評価を依頼するケースは、主に依頼者の主張を裏付ける証拠資料として、または公正な解決の基準を提示するために、不動産の価格や賃料が争点となる以下のような法的な場面です。
【訴訟・調停・裁判】
目的: 裁判所に提出する、不動産の客観的な価値を示す証拠資料とするため。
(具体的なケース)
- 遺産分割: 相続財産としての不動産の公平な評価額を確定させるため。
- 財産分与(離婚): 夫婦共有財産である不動産の公正な時価を算定するため。
- 損害賠償請求: 事故や開発による不動産価値の低下(減価)を評価するため。
- 担保権の実行・競売: 担保不動産の適正な評価額を把握するため。
【賃料・地代に関する紛争】
目的: 賃料の増減額請求訴訟や調停において、適正な賃料水準を算定するため。
(具体的なケース)
- 借地借家法に基づく賃料増減額請求。
- 立退料の算定: 立ち退きに伴う借家権・借地権の価値や移転費用の補償額を客観的に算出するため。
【税務・取引に関する紛争】
目的: 税務当局や当事者との価格に関する主張の裏付けとするため。
(具体的なケース)
- 親族間・同族間売買: 取引価格の適正性(贈与税課税の回避)を証明するため。
- 特定贈与: 遺産の一部として特定の相続人に不動産を贈与する際の公平な価値を算定するため。
弁護士は、不動産鑑定評価書を依頼者の主張の法的説得力を高めるための最強の武器として活用します。
税理士や会計士が不動産鑑定評価を依頼するケースは、主に企業の財務報告や税務申告の正確性を確保するため、または経営判断の根拠となる不動産の公正な価値を算定する必要がある以下のような場面です。
【財務会計目的】
上場企業などの財務諸表作成や会計監査において、不動産の公正な価値を示すために依頼されます。
- 減損会計
資産の帳簿価額を、収益性の低下などにより回収可能価額まで切り下げる(減損)必要がある場合に、その回収可能価額(正味売却価額や使用価値)を算定するため。 - 賃貸等不動産の時価評価
企業が保有する賃貸用不動産について、**公正価値(時価)**を算定し、財務諸表に注記するため(金融商品取引法など)。 - M&A・企業結合会計
買収した企業が保有する不動産を、企業結合時の**公正な取得原価(時価)**で評価し直すため(パーチェス法におけるPPA:取得原価の配分)。 - 現物出資
会社設立や増資の際、不動産を現物で出資する場合に、その適正な価値を証明するため(検査役の調査に代わる証明)。
【税務・取引目的】
納税額の適正化や、税務署への説明責任を果たすために依頼されます。
- 相続・贈与税対策
財産評価基本通達では不合理な高額評価となる不動産(広大地、容積率未消化地など)について、鑑定評価額を根拠に適正な評価額を算定し、相続税・贈与税の申告を行うため(節税効果や税務調査対策)。 - 親族間・同族間売買
親族や同族会社間での不動産売買において、取引価格が時価から乖離していないことを証明し、贈与税や法人税(寄付金認定)のリスクを回避するため。 - 同族会社への土地の賃貸
役員などが所有する土地を同族会社に賃貸する場合の適正な地代を算定し、不当に低い賃料による所得税課税リスクを避けるため。
税理士や会計士は、不動産鑑定評価書を会計基準や税法上の要請を満たし、企業の財務情報や税務申告の信頼性を裏付ける客観的な裏付け資料として活用します。
司法書士や行政書士が不動産鑑定評価を依頼するケースは、主に不動産の登記や公的な文書作成・提出に関連し、その前提として客観的な不動産価値の証明が必要となる以下のような場面です。
【登記・法務手続き】
司法書士は、不動産の権利関係の登記を専門としており、公正な取引価格や時価の証明が必要な場合に依頼します。
- 相続登記・遺産承継
遺産分割協議書作成や相続登記の際に、不動産を現物で分ける(代償分割)場合の代償金の算定根拠とするため。公平な分割を促し、相続人間の合意形成を支援します。 - 生前贈与・財産分与に伴う登記
親族間での贈与や財産分与(離婚など)に伴う所有権移転登記の際、取引価格が適正であることを証明し、贈与税課税のリスクを避けるための参考資料とするため。 - 会社設立時の現物出資登記
会社設立や増資の際、不動産を現物で出資する場合、その適正な評価額(時価)を証明するための資料とするため。
【行政手続き・契約書作成】
行政書士は、官公署に提出する書類作成や契約書作成を専門としており、特に公的な手続きや複雑な権利関係の際に依頼します。
- 許認可・開発関連
建設業や産業廃棄物処理業などの許認可申請において、申請者の財産的基礎を証明する必要がある場合、その保有不動産の客観的な価値を裏付けるため。 - 契約書・合意書の作成
複雑な権利関係(借地権・借家権、共有関係など)に基づく契約書や合意書を作成する際、立退料や権利金などの経済的な価値を客観的に算定し、紛争予防と公正性を担保するため。 - 特定の手続きの裏付け
相続財産目録作成や事業承継計画作成など、不動産の正確な価値把握が前提となる行政手続き・コンサルティング業務の根拠とするため。
これらの専門家が鑑定評価を依頼するのは、法的な手続きや公的な書類の作成において、不動産の価格に関する客観性・公正性・専門性を確保するためです。
国や地方公共団体が不動産鑑定評価を依頼するケースは、主に公的な業務や行政目的において、税金や補償の公平性、公的資産の適正な管理を確保するために、不動産の客観的な価値を算定する必要がある以下のような場面です。
【公的な価格決定・基準設定】
国や地方公共団体が、一般の土地取引の指標や課税の基準となる価格を設定するために依頼します。
- 地価公示・地価調査
国土交通省による地価公示(公示地価)や、都道府県による地価調査(基準地標準価格)において、適正な価格水準を決定するため。これらは一般の土地取引の指標や公共事業用地取得価格の算定基準となります。 - 固定資産税評価
地方公共団体(市町村)が、固定資産税・都市計画税を賦課するための固定資産税評価額を算定する際の参考資料とするため。
【公共事業に伴う土地の取得・補償】
道路、公園、公共施設などの建設・整備のために、私有地を取得したり、権利者に補償金を支払ったりする際に依頼します。
- 公共用地の取得価格算定
道路、学校、ダムなどの公共事業に必要な土地を買収する際の適正な取引価格を算定するため。 - 損失補償額の算定
土地の買収に伴う建物や工作物の移転補償金、借家人や借地人に対する借家権・借地権の補償金(立退料など)の適正な額を算定するため。
【公的資産の管理・処分】
国や地方公共団体が保有する財産(公有財産)を売却、賃貸、交換する際に依頼します。
- 公有地の売却・賃貸
国有地や市有地などの公有財産を一般に売却したり、公的な目的で貸し付けたりする際の適正な売却価格や賃料を算定するため。 - 現物出資・交換
地方公共団体が土地などを現物で出資する場合や、公有地と私有地を交換する場合の公正な交換差金を算定するため。
国・地方公共団体は、公益性と公平性が極めて重要となるため、「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づき、不動産鑑定士による客観的で公正な評価を必要とします。
投資法人(J-REITを含む)や不動産ファンドが不動産鑑定評価を依頼するケースは、主に投資家への情報開示、資産価値の正確な把握、および法的な規制遵守を目的とする以下のような場面です。
【投資家への情報開示・規制遵守】
投資信託や金融商品としての信頼性を担保し、関連法令(投信法、金商法など)の要求事項を満たすために依頼されます。
- 保有不動産の時価評価(期末・中間)
投資法人が保有する不動産について、決算期末や中間期に公正な時価を算定し、投資家への情報開示(資産運用報告書など)を行うため。特にJ-REITでは、資産運用報告書に不動産鑑定評価書を添付することが一般的です。 - 新規取得時の価格決定
新たに不動産を取得する際、取得価格の合理性を裏付けるため。取得価格が鑑定評価額を上回る場合は、その理由を投資家や社外取締役などに説明する必要があります。 - 売却時の価格決定
保有不動産を売却する際、売却価格の適正性を証明し、投資主への不利益を防ぐため。
【資産運用戦略・資金調達】
投資判断の根拠、資金調達の手段、およびファンド内の管理のために依頼されます。
- 物件のデューデリジェンス(DD)
新規物件の取得を検討する際、その物件の収益性、市場競争力、および適正な価格水準を詳細に分析し、最終的な投資判断の根拠とするため。 - 資金調達・担保評価
金融機関から融資を受ける際、保有不動産の担保価値を客観的に証明するため。 - ファンドの組成・清算
新たな不動産ファンドを組成する際、組み入れる不動産の価値を算定するため。また、ファンドの運用期間終了に伴い資産を売却・処分する際の清算価格を決定するため。
投資法人・ファンドにとって、不動産鑑定評価書は企業価値の核となる不動産価値の客観性と透明性を保証する生命線とも言える資料です。