COLUMN

相続した不動産の価格を自分で調べる4つの方法──無料で分かること・分からないこと

公開 更新 執筆 不動産鑑定士 吉田健人
相続した不動産の価格を自分で調べる4つの方法──無料で分かること・分からないこと

「実家がいくらなのか、まず自分で見当をつけたい」——遺産分割の話し合いを始める前の、ごく自然な発想です。実は、無料で使える公的な情報だけでも、相場観の入口までは十分たどり着けます。代表的な4つの方法と、その限界を整理します。

方法1──路線価図で概算する

国税庁の「路線価図・評価倍率表」サイトでは、相続税路線価(相続税を計算するために国税庁が毎年公表する道路ごとの土地単価)を誰でも確認できます。前面道路の単価に土地の面積を掛ければ、土地のおおまかな税務上の評価が概算できます。

ただし路線価は公示価格水準の8割程度に設定された課税用の数字で、時価そのものではありません。詳しくは路線価と時価の違いをご覧ください。

方法2──地価公示・地価調査を見る

国土交通省の「不動産情報ライブラリ」では、地価公示(国が毎年1月1日時点で公表する標準地の価格)と都道府県地価調査の価格を地図上で確認できます。時価に近い水準を目指した価格なので、近くの標準地を探せば「この辺りの土地の水準」がつかめます。ただし公表されるのは選ばれた地点だけで、お手元の土地そのものの価格ではありません。

方法3──取引価格情報を調べる

同じ「不動産情報ライブラリ」で、実際に成立した売買の価格情報(取引当事者へのアンケート等に基づくデータ)を地域・時期・種類で絞って検索できます。実例に基づく点が強みですが、物件が特定されないよう地域や面積がぼかされており、「どんな土地・建物の取引か」までは分かりません。

方法4──仲介会社の無料査定

より個別の物件に踏み込んだ数字が欲しい場合、仲介会社の無料査定という手段があります。ただし査定は売却前提の営業資料で、会社によって金額に幅が出ます。使い方のコツは無料査定の使い方で解説しています。

補足──マンションならポータルサイトの売出情報も手がかりになる

マンションや、近隣に似た戸建てが多い地域であれば、不動産ポータルサイトの売出情報も手がかりになります。同じマンションや近隣の類似物件がいくらで売りに出ているかを確認する方法です。ただし売出価格は「売主の希望価格」であり、実際の成約価格はそれより下になるのが通常です。たとえば1割程度の値引きを見込んで読む、といった割り引いた見方が必要です。同じマンション内の過去の売出・成約の履歴は、管理会社や仲介会社を通じて分かることもあります。

調べた数字を読むときの3つのコツ

  • 売出価格と成約価格を区別する:売出は高めに出ます。取引価格情報は成約ベース、ポータルサイトは売出ベースです
  • 時期を確認する:1年前の事例には、その間の市況変動の分だけずれがあります
  • 条件の違いを意識する:階数・向き・角部屋かどうか・リフォームの有無で、同じマンションの中でも価格に差がつきます。土地なら形状・間口・接道の違いが効きます

自分で調べた数字の限界

これらの方法で分かるのは、あくまで「概ねの相場観」までです。土地の形状・間口・高低差・再建築の可否といった個別の事情は反映できませんし、なにより、相続人の間で数字が割れたときに「自分で調べた数字」は説得の根拠になりにくいのが実情です。借地権・共有持分・賃貸中といった条件が付くと、単純な相場比較では価格に届きません。

言い換えると、自分で調べた相場観は自分の意思決定には十分使えます。売るか持ち続けるか、専門家に評価を依頼する価値があるか――こうした判断の材料にはなります。限界が来るのは他人を説得する場面です。

話し合いで1つの数字への合意が必要になった段階が、第三者による専門評価の出番です。正式な鑑定評価書のほか、協議の内部資料として使う価格等調査報告書という費用を抑えた選択肢もあります。

離婚の財産分与で自宅の価値を調べる場合も同じ

離婚の財産分与で自宅の価値の当たりをつけたい場合も、使う情報源と限界は同じです。相場観を持って臨む人と白紙で臨む人とでは、相手方との協議でも専門家への相談でも、話の質が変わります。一方で、相手方が別の数字を主張したときに「ポータルサイトでこう出ていた」は根拠として弱く、調停委員への説明となればなおさらです。自分調べで当たりをつけ、争いが生じたら根拠のある評価に切り替える。この二段構えが、費用対効果のよい進め方です。離婚に伴う不動産評価の全体像は離婚・財産分与の不動産評価にまとめています。

まとめ

  • 路線価図・地価公示・取引価格情報は無料で使え、相場観の入口になる
  • ただしいずれも個別の物件の時価そのものではない
  • 売出価格と成約価格の区別、時期、条件差に注意して読む
  • 自分の判断には十分。相続人間や離婚の相手方との間で数字への合意が必要な場面では、中立の専門評価が機能する

まずはご自身で調べてみて、「この数字で話し合いを進めてよいのか」と迷ったら、その段階でのご相談も歓迎します。ご自身で調べた数字を持ち込んでいただければ、それを出発点に「評価を取る意味があるか」からお答えします。相続の方はお問い合わせ(相続)、離婚の方はお問い合わせ(離婚)からお気軽にどうぞ。

この記事を書いた人

吉田 健人代表取締役・不動産鑑定士

株式会社KRE Appraisal代表。相続・離婚・借地・賃料など、価格が争点になる場面の鑑定評価を扱う。不動産鑑定士(登録 第11191号)。

プロフィール →
お問い合わせLINE電話する
↑