COLUMN

管理費・修繕積立金の滞納があるマンションの財産分与

公開 執筆 不動産鑑定士 吉田健人
管理費・修繕積立金の滞納があるマンションの財産分与

別居後の家計の混乱で、マンションの管理費や修繕積立金の支払いが止まっていた——財産分与の準備を進める中で、こうした滞納が発覚することがあります。滞納は単なる未払いではなく、マンションの価値評価と清算の計算に直接影響します。

滞納は「物件にくっついて」引き継がれる

マンションの管理費・修繕積立金の滞納には、特殊な性質があります。区分所有法の仕組み上、滞納分は物件を取得した人(買主・特定承継人)にも請求できるとされているのです。

このため、滞納のあるマンションを買う人は、物件価格に加えて滞納分の負担を覚悟しなければなりません。市場では実質的に「価格から滞納額を差し引いて」取引されることになり、評価上も滞納額は価値の控除要因になります。

財産分与での扱い

分与の計算では、次の整理が必要になります。

  • 時価の把握:滞納がない状態での時価をまず確定する
  • 滞納額の確定:管理組合・管理会社に照会して正確な金額を把握する
  • 負担の整理:滞納をどちらが(またはどの割合で)負担するかは、婚姻中の家計の経緯にも関わる法律論点です。弁護士にご相談ください

「時価3,000万円・滞納80万円の家」を取得することは、実質2,920万円の資産を取得することです。代償金の計算でこの調整を忘れると、取得する側が滞納分だけ損をします。

滞納の確認方法

自分が管理費の支払いに関与してこなかった場合、滞納の有無自体を知らないことがあります。

  • 管理会社への照会(区分所有者本人であれば回答を得られます)
  • 管理組合の総会資料(滞納状況が報告されている場合があります)
  • 売却時には「重要事項調査報告書」に滞納額が記載されます

修繕積立金の積立総額が計画より不足しているかどうかも、同じ資料で確認できます。積立不足のマンションは将来の値上げ・一時金のリスクがあり、これも評価の考慮要素です。

まとめ

  • 滞納は買主に引き継がれる性質上、物件価値から差し引いて考える
  • 代償金の計算前に、管理会社照会で滞納額を確定させる
  • 負担の割り付けは法律論点。弁護士と整理を

当事務所の評価では、管理費・修繕積立金の水準と滞納・積立状況を確認項目に含めています。重要事項調査報告書の読み方のご相談も承ります。

この記事を書いた人

吉田 健人代表取締役・不動産鑑定士

株式会社KRE Appraisal代表。相続・離婚・借地・賃料など、価格が争点になる場面の鑑定評価を扱う。不動産鑑定士(登録 第11191号)。

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