COLUMN
不動産鑑定士とは何をする人か──弁護士・税理士・仲介会社との違い

「不動産鑑定士に相談したほうがいい」と弁護士から言われて、初めてこの職業を知った——というご相談者は少なくありません。財産分与の場面で登場する専門家たちの役割を整理しておくと、誰に何を頼むべきかが明確になります。
不動産鑑定士とは
不動産鑑定士は、不動産の経済価値を判定する国家資格者です。「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づく資格で、不動産の適正な価格を判定して鑑定評価書を発行できるのは不動産鑑定士だけです。
国や自治体の地価公示・地価調査、裁判所の競売評価、相続や企業会計のための時価評価など、「価格の公的な判定」が必要な場面で働いています。試験の合格率や登録者数の面で、弁護士・公認会計士と並ぶ難関国家資格の一つとされています。
財産分与の場面での専門家の使い分け
弁護士:離婚条件の交渉・調停・訴訟の代理、財産分与の主張の組み立て。法律問題の総合窓口です。
不動産鑑定士:不動産の価格の判定。財産分与では「この家はいくらか」という争点の部分を担当します。弁護士が法律の主張を組み立てるのに対し、その主張の前提となる価格の根拠を作る役割です。
税理士:財産分与に伴う譲渡所得税などの税務判断・申告。
司法書士:名義変更(所有権移転登記)の手続。
仲介会社:実際に売却する際の販売活動。無料査定は売却前提の営業活動として位置づけられます。
それぞれの職域は法律で区切られており、鑑定士は法律相談を受けられませんし、弁護士でない者が報酬を得て交渉を代理することもできません。「誰に頼むか」を間違えると、答えられない相手に相談し続けることになります。
相続(遺産分割)の場面での専門家の使い分け
「実家の価格でもめているなら、不動産鑑定士に相談してみては」と、相続の場面で弁護士や税理士から勧められて当事務所にたどり着く方もいらっしゃいます。登場する専門家の顔ぶれは離婚とほぼ同じですが、担当の分け方には相続ならではの点があります。
弁護士:遺産分割協議・調停・審判の代理、寄与分や特別受益といった法律上の主張の組み立て。相続人どうしの対立が深い場合の総合窓口です。
税理士:相続税の申告と税務判断。相続税路線価(国税庁が課税のために定める道路ごとの価格)に基づく税務上の評価はこちらの領域です。
司法書士:相続登記(不動産の名義変更)の手続。
不動産鑑定士:遺産分割で「実家はいくらか」が争点になったときの時価の判定。他の相続人が出してきた評価資料の検証や、遺留分のように過去の時点の価格が必要になる場面の評価も担当します。
見落とされやすいのは、相続税の申告に使う評価と、遺産分割で相続人どうしが分けるための時価は、目的の違う別の数字だという点です。たとえば申告書では路線価ベースで2,400万円とされた実家でも、遺産分割では時価3,000万円を前提に代償金を話し合う、ということは珍しくありません。前者は税理士、後者は鑑定士と整理しておくと、相談先を間違えずに済みます。相続全体の進め方は相続の不動産評価にまとめています。
鑑定士に頼めること・頼めないこと
頼めること:不動産の時価の鑑定評価、話し合い用の価格等調査、相手方が出してきた評価資料の検証(セカンドオピニオン)、過去時点の価格の評価。
頼めないこと:離婚条件の交渉、財産分与の割合の主張、税額の計算。これらは弁護士・税理士の職域であり、当事務所でもご相談があれば適切な専門家への相談をおすすめしています。
まとめ
- 不動産鑑定士は「価格の判定」の国家資格者。鑑定評価書を発行できる唯一の職業
- 弁護士=法律、税理士=税、鑑定士=価格、と役割が分かれる
- 財産分与では、価格の争点を鑑定士が引き受けることで、弁護士は法律の主張に集中できる
- 相続でも分担は同じ。相続税の申告評価は税理士、遺産分割で使う時価は鑑定士、相続登記は司法書士
「これは鑑定士に聞く話なのか分からない」という段階のご質問も歓迎します。職域外のご相談には、どの専門家に聞くべきかを含めてお答えします。





