COLUMN

税理士・弁護士からの紹介案件で気をつけたい3つのポイント

公開 執筆 不動産鑑定士 吉田健人
税理士・弁護士からの紹介案件で気をつけたい3つのポイント

不動産鑑定評価の案件は、士業の先生方からのご紹介で持ち込まれることが多くなります。税理士先生からの相続案件、弁護士先生からの離婚・遺産分割案件 ── いずれも、依頼者・士業先生・鑑定士の三者が関わる案件構造です。

本記事では、こうした紹介案件を円滑に進めるために、私たちが特に意識している3つのポイントをまとめます。士業の先生方への参考情報として、また、ご相談いただく際の前提整理として、ご活用ください。

ご紹介を歓迎する理由

私たちは、税理士・弁護士・司法書士など、士業の先生方からの案件紹介を歓迎しています。理由は明確です。

  • 士業先生が「鑑定が必要」と判断された案件は、鑑定評価の活用余地が高いものが多い
  • 先生方との継続的な連携で、案件ごとに学びが蓄積される
  • 依頼者にとっても、信頼する専門家のネットワークの中で進められる安心感がある

一方で、紹介案件は単独依頼と比べて関係者が増えるぶん、論点も複雑になりがちです。以下の3つのポイントが、円滑な進行のカギになります。

ポイント1:依頼者と士業先生のどちらが鑑定の依頼者か

通常は士業先生が窓口

実務上は、士業先生が窓口となり、鑑定契約も士業先生と当事務所で締結する形が一般的です。これには次のようなメリットがあります。

  • 専門用語のやり取りが効率的(依頼者を介さなくて済む)
  • 報告書のドラフト段階で先生のチェックを受けられる
  • 守秘義務の経路が単線になる

鑑定評価書の宛名と契約相手の整理

ただし、鑑定評価書の宛名は、必ずしも契約相手と一致しません。

契約相手(依頼者)

士業の先生(窓口)

または依頼者本人

鑑定評価書の宛名

依頼者本人

または訴訟・申告で必要な相手方

たとえば「弁護士先生が窓口だが、鑑定評価書は依頼者本人宛て」「税理士先生が窓口で、鑑定評価書は税務署提出用」というパターンが頻繁にあります。最初の打ち合わせで、この点を明確にしておくことが重要です。

鑑定評価書の宛名は事後変更が難しい

鑑定評価書の宛名は、評価書本体に記載される項目です。納品後の変更には改訂手続きが必要となるため、事前に確定しておくことを強くお勧めします。

ポイント2:使途を最初に確認する

申告用、訴訟用、社内資料用で書式が変わる

不動産鑑定評価書は、使途によって書式・記載の重みが変わるものです。

  • 税務申告用:評価額の根拠と算出プロセスを詳細に。税務当局の調査に耐える書式
  • 訴訟・調停用:評価書として完結性を持ち、第三者が読んでも論理が追えること
  • 社内・社外資料用:要点をシンプルに、専門用語を避けた説明
  • 金融機関提出用:担保評価としての保守的視点

同じ物件でも、使途が変われば、強調すべき点も書式の選択も変わります。

後から「裁判で使うとは聞いていなかった」を避ける

実務でしばしば発生するのが、「当初は社内資料として依頼したが、後日訴訟になり、その鑑定評価書を訴訟で使いたい」というケースです。

社内資料として書かれた鑑定評価書は、訴訟資料としては不十分な場合があります。後から訴訟用に書き直すには追加工数が発生し、最悪の場合は別途新規の鑑定が必要になります。

案件相談の最初の段階で「将来的にこの鑑定評価書をどこに出す可能性があるか」を士業先生・依頼者と共有することで、後の手戻りを大きく減らせます。「念のため訴訟・調停にも耐える書式で」と最初から指定されることをお勧めしています。

ポイント3:スケジュールを士業の事件・申告期限から逆算

鑑定評価書の作成期間

正式な鑑定評価書の作成には、通常2〜4週間を要します。

  • 物件調査(現地調査・書類確認):1〜2週間
  • 取引事例分析・評価額算出:1〜2週間
  • 評価書作成・社内チェック:3〜5日

これに加えて、ヒアリング・契約・打合せ等を含めると、依頼から納品まで4〜6週間を見込むのが現実的です。

補足質問・修正対応の余裕

鑑定評価書納品後、士業先生・依頼者から補足質問・修正依頼が入ることがあります。これに対応する時間も含めて、事件・申告期限から最低6週間以上の余裕をもってご相談いただくと、スムーズです。

案件全体の標準的なスケジュール

6〜8週間

複雑な案件はこれ以上を要する場合あり

急ぎ対応の限界

「明日の調停に間に合わせたい」というご依頼は、残念ながらお受けできません。鑑定評価書は、現地調査・取引事例分析・専門家としての判断を経て作成されるため、品質を保つには時間が必要です。

もしスケジュールが極めてタイトな場合は、正式鑑定ではなく価格等調査報告書で対応する選択肢もあります。価格等調査報告書は2週間程度で対応可能ですが、鑑定評価書ではないため、訴訟・税務申告での効力には制約があります。

連携を円滑にするためにできること

最後に、士業の先生方との連携を円滑にするために、私たちが心がけていることを整理します。

  • 進捗の節目ごとの共有:契約締結時、現地調査完了時、評価額の方向性が見えた時、ドラフト完成時、納品時
  • 先生方の業務リズムへの合わせ:メール返信、電話の時間帯、書類のやり取り方法
  • 守秘義務の徹底:案件情報は原則として担当鑑定士のみが取り扱い、外部委託は最小限
  • 報酬体系の透明性:先生方への紹介料・キックバック等は一切なし。依頼者本位の中立性を堅持

紹介料はありません

当事務所では、士業の先生方への紹介料・リベート等の支払いは一切行っておりません。これは、鑑定評価の中立性を担保し、依頼者の利益を最優先にするためです。

まとめ

  • 紹介案件は依頼者・士業先生・鑑定士の三者構造になりがち
  • 「契約相手」と「鑑定評価書の宛名」を最初に整理する
  • 「使途」を最初に確認し、書式を決める
  • スケジュールは事件・申告期限から最低6週間以上の余裕を持つ
  • 進捗共有・守秘義務徹底・報酬体系の透明性で連携の質を担保

税理士・弁護士・司法書士など、士業の先生方からのご紹介・ご相談を、心よりお待ちしております。

この記事を書いた人

吉田 健人代表取締役・不動産鑑定士

株式会社KRE Appraisal代表。相続・離婚・借地・賃料など、価格が争点になる場面の鑑定評価を扱う。不動産鑑定士(登録 第11191号)。

プロフィール →
お問い合わせLINE電話する
↑