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借地の更新拒絶で追い出される?立ち退き料と「正当事由」の考え方を不動産鑑定士が解説

公開 執筆 不動産鑑定士 吉田健人
借地の更新拒絶で追い出される?立ち退き料と「正当事由」の考え方を不動産鑑定士が解説

「地主から、次の期間満了で契約は更新しないと言われた」「借地だから、いずれ追い出されてしまうのではないか」。長年住み続けてきた借地の家について、こうした不安を抱えている借地人様は少なくありません。

まずお伝えしたいのは、借地は期間が満了したからといって当然に終わるものではないということです。借地借家法は借地人の生活や事業の基盤を守るため、地主が更新を拒むには「正当の事由」が必要だと定めています。そして、その正当事由を補う要素として、いわゆる立ち退き料(財産上の給付)が考慮されます。本記事では、更新拒絶と立ち退き料の基本的な考え方と、立ち退き料の算定で私たち鑑定士が関わる「価格」の論点を整理します。

借地の更新拒絶は当然には認められない

建物があれば更新したものとみなされる(第5条)

借地借家法第5条は、借地権の存続期間が満了する際に借地人が更新を請求したときは、建物がある場合に限り、従前の契約と同一の条件で更新したものとみなすと定めています。期間満了後も借地人が土地の使用を続ける場合も同様です。ただし、地主が遅滞なく異議を述べたときは、この限りではありません。

異議には「正当の事由」が必要(第6条)

では、地主が異議を述べればそれで終わりかというと、そうではありません。第6条は、地主の異議は正当の事由があると認められる場合でなければ述べることができないとし、その判断にあたって次の事情を考慮すると定めています。

  • 地主と借地人がそれぞれ土地の使用を必要とする事情
  • 借地に関する従前の経過(契約の経緯、地代の支払い状況など)
  • 土地の利用状況
  • 土地の明渡しの条件として、または明渡しと引換えに、地主が借地人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合のその申出

中心となるのは双方の土地使用の必要性であり、財産上の給付の申出(立ち退き料)は、それだけで正当事由が認められるものではなく、他の事情を補う要素として考慮されると一般に説明されています。

借地人に不利な特約は無効(第9条)

「期間満了時には無条件で土地を返す」といった特約が契約書にあっても、第9条により、更新に関する規定に反する借地人に不利な特約は無効とされます。契約書の文言だけで諦める必要はありません。

旧法借地権の更新拒絶は旧借地法のルールで判断する

平成4年8月1日より前の借地権は旧法が適用される

借地借家法は平成4年(1992年)8月1日に施行されました。附則第6条は、施行前に設定された借地権に係る契約の更新に関しては「従前の例による」と定めています。つまり、それより前に設定された旧法借地権の更新は、旧借地法のルールで判断されます。現在も残る借地の多くは、この旧法借地権です。

旧借地法でも更新拒絶には正当事由が必要

旧借地法のもとでも、地主が更新を拒むには正当の事由が必要とされてきました。旧借地法では、更新後の期間は堅固建物で30年、非堅固建物で20年とされています。借地借家法(最初の更新後20年、その後10年)と比べて更新後の期間が長く、借地人の保護が厚いと言われるのはこのためです。旧法と新法の違いは旧法借地権と新法の違いで解説しています。

まずは自分の借地権の種類を確認する

更新拒絶の話が出たら、最初に確認すべきは借地権がいつ設定されたかです。契約書の日付、当初の契約から続いているのか、途中で契約を結び直したのかによって、適用されるルールが変わる可能性があります。定期借地権(更新がなく期間満了で終了する借地権)であれば、そもそも更新拒絶の問題にはなりません。

立ち退き料(財産上の給付)の算定で論点になるもの

立ち退き料に法律上の計算式はない

借地借家法は、財産上の給付の申出を正当事由の考慮要素として定めていますが、その金額の計算方法は定めていません。立ち退き料の額は、地主側・借地人側の事情や他の正当事由の充足の程度によって個別に判断されるものであり、「借地権価格の何%」といった一律の基準があるわけではありません。

論点になりやすい価格の要素

立ち退き料の額を検討する際には、次のような要素が論点になると言われています。

要素内容
借地権価格借地人が失う権利そのものの経済的価値
建物価格借地上の建物の価値
移転に伴う費用引越し・新たな住まいの確保などにかかる費用
営業上の損失店舗・事業所として使っている場合の影響

どの要素をどの程度考慮するかは事案ごとに異なり、裁判では個別の事情を踏まえて判断されます。具体的な見通しは弁護士にご確認ください。

鑑定士の視点:借地権価格は評価基準に沿って求める

論点の中心となる借地権価格について、不動産鑑定評価基準は、借地権者に帰属する経済的利益(長期間にわたって土地を独占的に使用できる安定的な利益や、適正な地代と実際の地代との差である賃料差額など)に着目して評価するとしています。取引慣行の成熟した地域では、比準価格、土地残余法による収益価格、賃料差額を還元した価格、借地権割合による価格を関連づけて決定し、残存期間や契約の経緯、授受された一時金なども総合的に勘案します。路線価の借地権割合だけで立ち退き料を考えるのは危険です。借地権価格の考え方は借地権の価格・売却相場をご覧ください。

CASE STUDY想定されるケース(架空)

地主から更新拒絶と立ち退き料の提示を受けた借地人

説明のための想定されるケースです。

  • 旧法借地権で、借地人は築年数の古い自宅に長年居住
  • 地主は「子の住宅を建てたい」として更新拒絶を通知し、一定額の立ち退き料を提示
  • 借地人は提示額が妥当か判断できず、借地権の価格も把握していない

このような場面では、まず正当事由が認められる見込みを弁護士と検討し、並行して借地権価格・建物価格の水準を把握しておくことで、提示額を冷静に評価できます。価格の根拠がないまま交渉に臨むと、提示額を受け入れるか拒むかの二択になりがちです。

更新されない場合の建物買取請求権(借地借家法13条)

建物を「時価」で買い取るよう請求できる

借地借家法第13条は、借地権の存続期間が満了し、契約の更新がない場合、借地人は地主に対し、建物その他の附属物を時価で買い取るよう請求できると定めています。仮に更新拒絶が認められた場合でも、借地人は建物をそのまま失うわけではありません。

「時価」には場所的利益が参酌される

建物買取請求権の時価について、最高裁昭和35年12月20日判決(旧借地法の事案)は、建物が現存するままの状態における価格であり、敷地の借地権そのものの価格は加算すべきでないが、建物の存在する場所的環境は参酌すべきであるとしました(不動産適正取引推進機構の判例一覧による)。建物の価格をどう評価するかは、私たち鑑定士の専門領域です。詳しくは建物買取請求権と建物価格で解説しています。

定期借地権では特約で排除できる

なお、定期借地権(第22条)では、建物買取請求をしない旨の特約を定めることができます。ご自身の契約がどの種類の借地権なのかを、ここでも確認しておくことが重要です。

まとめ

  • 借地は期間満了で当然に終わらず、地主の更新拒絶には正当の事由が必要(借地借家法5条・6条)
  • 旧法借地権の更新は、附則6条により旧借地法のルールで判断される
  • 立ち退き料は正当事由を補う要素であり、算定では借地権価格・建物価格・移転費用などが論点になる
  • 更新されない場合でも、借地人には建物買取請求権(13条)がある

地主から更新拒絶や立ち退きの話を持ちかけられた借地人様(借地人様へ)、立ち退き料の水準を検討したい地主様、借地の明渡し案件を担当される弁護士の先生方に、借地権価格・建物価格の根拠を中立の立場からお示しします。法律上の見通しは弁護士にご確認ください。弁護士に依頼されていない方には、弁護士のご紹介も可能です。費用は料金をご覧ください。初回のご相談は無料です。ぜひ一度ご相談ください。

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この記事を書いた人

吉田 健人代表取締役・不動産鑑定士

株式会社KRE Appraisal代表。相続・離婚・借地・賃料など、価格が争点になる場面の鑑定評価を扱う。不動産鑑定士(登録 第11191号)。

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