COLUMN

平城ニュータウンの空き家はこの先も売れる?駅距離と高低差で分かれる住宅団地の価格

公開 執筆 不動産鑑定士 吉田健人
丘陵地を造成した住宅団地の坂道。石積みの擁壁の上に建つ築年数の経った木造2階建て住宅と、道路から玄関へ続くコンクリートの階段

「親が住んでいた平城ニュータウンの家、空き家のままでも、そのうち誰かが買ってくれるだろう」——県外にお住まいで、奈良市北部や生駒市の住宅団地に実家を持つ方から、こうした声を伺うことがあります。緑が多く区画の整った住宅地ですから、そう考えるのは自然なことです。

結論から申し上げます。平城ニュータウンも生駒の住宅団地も、住宅地として今すぐ買い手がいなくなるわけではありません。ただし、同じ「ニュータウン」のなかで、駅から歩けるか、道路と敷地に高低差がないか、車を停められるかによって、売れる家と売れにくい家がはっきり分かれ始めています。そして後者ほど、空き家のまま時間が経つと手取りが目減りしていきます。

本稿では、奈良市の調査報告書と令和8年奈良県地価調査の地点データをもとに、住宅団地で進むオールドタウン化の実像を確認します。そのうえで、私たち鑑定士が中古住宅の価格を見るときに重視する条件と、売却の適期を逃さないための判断材料を整理します。

平城ニュータウンで空き家が増える背景:数字で見るオールドタウン化

入居開始から50年、住区によって違う高齢化の進み方

平城・相楽ニュータウンは、奈良市と京都府木津川市・精華町にまたがる計画住宅地で、1972年(昭和47年)11月に平城第二団地で入居が始まりました。2022年にまちびらき50周年を迎えています。

奈良市が令和5年3月にまとめた「平城・相楽ニュータウンにおける官民連携手法導入検討調査報告書」は、住区ごとの入居開始時期と年齢構成を示しています。奈良市側の4住区を抜き出します(人口・世帯数と65歳以上の割合は住民基本台帳、2023年1月1日時点)。

住区入居開始人口・世帯数65歳以上の割合
右京1972年4,787人・2,448世帯37.7%
神功1973年5,106人・2,331世帯32.6%
朱雀1976年6,476人・2,860世帯35.8%
左京1983年6,007人・2,501世帯25.9%

同じニュータウンでも、早く分譲された右京・朱雀・神功では高齢化が進み、後から開発された左京とは10ポイント前後の差があります。報告書は、戸建の持ち家が占める割合が高いことから、共同住宅や賃貸住宅に比べて少子化・高齢化が急速に進んでいると分析しています。

オールドタウン化とは何か

オールドタウン化とは、ニュータウンで一斉に入居した世代がそろって高齢期を迎え、子ども世代が独立して流出することで、人口減少・高齢化・建物の老朽化が同時に進む現象を指します。同じ時期に同じ年代の世帯が入居したため、相続の発生も特定の時期に集中しやすいのが特徴です。

報告書では、平城・相楽ニュータウン全体の人口が2015年の3万9,945人から2040年には2万7,697人へ、約7割まで減ると推計されています。人口が減るなかで世代交代の時期が重なれば、同じ住区のなかで売り物件が同時期に増えることになります。

地価で見る平城ニュータウンと生駒の住宅団地

平城ニュータウン:駅から離れるほど単価が下がる

令和8年奈良県地価調査(価格時点2026年7月1日)で、平城ニュータウン内の住宅地の基準地(調査対象として選ばれた地点)を並べます。駅からの距離は公表値です。

基準地高の原駅からの距離㎡単価変動率
右京4丁目550m17万2,000円プラス1.2%
神功3丁目1.5km10万5,000円0.0%
左京2丁目2.1km8万9,500円0.0%

同じニュータウンの第一種低層住居専用地域(低層住宅の良好な環境を守るための用途地域)でも、駅に近い右京と2キロメートル離れた左京とでは約1.9倍の開きがあります。上昇しているのは駅に近い地点だけで、駅から離れた2地点は横ばいです。先ほどの表で高齢化率が低かった左京が、地価では最も低い。住民の若さより、駅までの距離のほうが価格に強く効いていることがわかります。

生駒の住宅団地:同じ市内で2倍以上の開き

生駒市の住宅地は、令和8年地価調査の平均でプラス1.0%と、県平均のマイナス0.8%を上回っています。ただし団地ごとに見ると、様相は大きく異なります。

基準地最寄り駅と距離㎡単価変動率
白庭台3丁目白庭台駅500m15万5,000円プラス2.0%
真弓3丁目学研北生駒駅1km13万4,000円プラス1.5%
さつき台1丁目東生駒駅2.5km10万6,000円プラス1.0%
鹿ノ台北3丁目学研奈良登美ヶ丘駅2km7万8,000円0.0%
軽井沢町生駒駅900m6万3,000円マイナス1.9%

注目していただきたいのは最後の軽井沢町です。生駒駅から900メートルと、距離だけならさつき台や鹿ノ台より駅に近いのに、価格は最も低く、唯一下落しています。基準地の説明は「生駒山腹斜面地の一般住宅が多い住宅地域」で、風致地区(自然景観を守るため建築に制限がかかる地区)にも指定されています。駅までの距離が近くても、坂と高低差がそれを打ち消すことを示す一例です。

県の概要が示す「郊外の利便性に劣る地域」

奈良県は令和8年地価調査の概要で、住宅地について、鉄道駅徒歩圏など利便性が高く住環境が良い地域では需要が旺盛である一方、「郊外の利便性に劣る地域においてはやや減退気味」で、地価はほぼ横ばいから弱含みと述べています。上の2つの表は、この記述を住宅団地の地点で確かめたものです。

ニュータウンの中古住宅で価格を分ける3つの条件

不動産鑑定評価基準(国土交通省)は、住宅地の価格を左右する要因として、地域全体に関わるものに「都心との距離及び交通施設の状態」を、個々の土地に関わるものに「高低、角地その他の接面街路との関係」や「交通施設との距離」を挙げています。住宅団地の中古住宅では、次の3つが特に効きます。

駅までバスか徒歩か

駅から1.5キロメートルを超えると、日常の足はバスか車になります。平城ニュータウンの報告書でも、高の原駅の利用者のうち駅まで徒歩で来る人が約6割を占めるとされ、徒歩圏にあるかどうかは暮らし方そのものを左右します。バスの本数が減れば、高齢の買い手にも子育て世帯にも選ばれにくくなり、買い手の層が狭まります。

階段のアプローチと駐車場の有無

丘陵地を造成した住宅団地では、道路から数段から十数段の階段を上がって玄関に至る敷地が珍しくありません。階段のある敷地は、車を敷地内に停められない、高齢になると出入りが負担になる、という2つの理由で買い手が限られます。駐車場を確保するには掘り込み車庫の工事が必要になることもあり、その費用は価格から差し引かれて見られます。古い擁壁(土を留めるための壁)の安全性と建て替え時の制約については、学園前・大和西大寺は本当に強いのか?同じ駅圏で3倍の差が生まれる奈良市西部の住宅地で詳しく解説しています。

1981年以前の建物は「土地の値段」で見られやすい

1970年代に分譲された住宅団地の戸建は、多くが1981年6月の建築基準法施行令改正前の旧耐震基準で建てられています。こうした建物は、買主が建て替えや大規模な改修を前提に検討することが多く、価格は「土地の値段から解体費を引いた額」を軸に決まりやすくなります。建物に値段がつかない前提で、土地の条件だけで勝負することになるのです。

想定されるケース:神功の実家を3年寝かせた場合

評価の出発点と個別の条件

東京在住のAさん(一人っ子)が、奈良市神功の実家を相続したとします。1975年築の木造2階建て、延べ床面積約110平方メートル、敷地200平方メートル。道路から約1.5メートル上がった敷地で玄関まで階段があり、駐車場はありません。数字はすべて説明のための仮定です。

項目金額考え方
土地の出発点2,100万円神功3丁目の基準地10万5,000円×200平方メートル
個別条件の減価マイナス315万円高低差・階段・駐車不可を仮に15%と置く
想定売却価格1,785万円更地で引き渡す前提
解体費約130万円木造約33坪×坪4万円と仮定

基準地は、その地域の標準的な画地として選ばれた地点です。高低差や駐車場の有無は標準に織り込まれていないため、個別に差し引いて考える必要があります。

放置するほど手取りが減る理由

Aさんがすぐに売った場合と、空き家のまま3年置いてから売った場合を比べます。

まず維持費です。固定資産税・都市計画税、火災保険、草刈りや通風のための往復などで年30万円かかるとすれば、3年で約90万円です。

より大きいのは税金です。相続した空き家を売ったときの3,000万円特別控除(租税特別措置法第35条第3項)は、1981年5月31日以前に建築された家屋であること、相続の開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることなどが要件で、現行制度の適用期限は2027年12月31日までの譲渡です。取得費を売却価格の5%(約89万円)、譲渡費用を解体費と仲介手数料(約66万円)とすると、譲渡所得は約1,500万円。特例を使えなければ、所得税・住民税は長期譲渡所得の税率20.315%で約305万円になります。

維持費と税金を合わせると、売る時期の違いだけで約400万円の差が生じうる計算です。この間に地価が横ばいでも、同じ住区で売り物件が増えれば、買い手の選択肢が増えるぶん交渉は厳しくなります。特例の要件の詳細は空き家の3,000万円控除は使えるか|奈良の実家を売る前に確認する7つの要件で整理していますが、適用の可否や税額は必ず税理士にご確認ください。

ニュータウンの空き家を売る時期をどう判断するか

期限から逆算して「いつまでに決めるか」を先に決める

相続した実家を売るかどうかで迷う方は多いのですが、特例の期限がある以上、「いつまでに決めるか」だけは先に決めておくべきです。一般に、遺品の整理、兄弟姉妹との合意、解体業者や仲介会社の選定には、半年から1年はかかります。相続から1年目のうちに価格の水準をつかんでおけば、残りの期間で落ち着いて動けます。

まず価格の水準を知る:価格等調査報告書と鑑定評価書

仲介会社の査定は売り出し価格の提案として役立ちますが、高低差や駐車場のように基準地から離れた条件を、根拠を示して金額に落とし込むのは鑑定評価の役割です。兄弟姉妹で分ける、代償金を払う、相続税の申告に使うといった場面では、第三者に説明できる根拠が必要になります。

費用の目安は、正式な鑑定評価書が戸建住宅(土地と建物)で30万円〜、金額の目安を知るための価格等調査報告書が15万円〜です(いずれも税別)。詳しくは料金のご案内をご覧ください。

県外から確認できること

奈良へ足を運ぶ前でも、次の3点は確認できます。1つ目は、国土交通省の不動産情報ライブラリで、実家に近い地価公示・地価調査の地点と駅からの距離を見ること。2つ目は、地図の航空写真やストリートビューで、道路と敷地の高低差、階段、駐車スペースの有無を見ること。3つ目は、固定資産税の課税明細書で建物の建築年を確認し、1981年5月31日以前かどうかを見ることです。遠方からの管理の選択肢は遠方の奈良の空き家をどう管理する?県外オーナーの選択肢にまとめています。

まとめ

平城ニュータウンや生駒の住宅団地は、住宅地として今すぐ買い手を失うわけではありませんが、駅距離・高低差・建物の年代によって、売れる家と売れにくい家の差が広がり始めています。

要点を振り返ります。

  • 平城ニュータウンの奈良市側では、早く分譲された右京・朱雀・神功で65歳以上の割合が3割を超え、全体の人口は2040年に約7割へ減ると推計されている
  • 令和8年地価調査では、平城ニュータウン内で駅550mの右京と2.1kmの左京に約1.9倍、生駒の住宅団地では2倍以上の価格差がある
  • 駅に近くても斜面地は下落しており、坂・階段・駐車場の有無が中古流通の成否を分ける
  • 1981年以前の建物は土地の値段から解体費を引いた額で見られやすい
  • 空き家のまま3年置くと、維持費と3,000万円特別控除の期限切れで数百万円の差が出うる

奈良市北部や生駒市の住宅団地に実家をお持ちで、県外から売却や分け方を検討されている方は、まず今の価格の水準を把握するところから始めてください。

奈良県の不動産の評価でお悩みの方は、奈良出身の鑑定士による初回無料相談をご利用ください。住宅団地の実家を「いつ・いくらで」手放すべきか、個別の条件を踏まえて一緒に整理いたします。

この記事を書いた人

吉田 健人代表取締役・不動産鑑定士

株式会社KRE Appraisal代表。相続・離婚・借地・賃料など、価格が争点になる場面の鑑定評価を扱う。不動産鑑定士(登録 第11191号)。

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