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不動産鑑定士の短答式、合格率と合格点はどう推移しているのか?国交省データ7年分で見る合格ライン

公開 執筆 不動産鑑定士 吉田健人
新緑の並木道を試験会場へ向かう不動産鑑定士試験の受験者たち

はじめに

不動産鑑定士の短答式試験の合格率は、令和2年から令和8年までの7年間、33〜37%台で推移しています。合格点(総得点に対する得点比率)は66.25%・70%・75%のいずれかで、直近3年は70%(200点満点で140点)です。

「不動産鑑定士は合格率5%前後の難関資格」と聞いて、受験をためらっている方もいるのではないでしょうか。その数字は、短答式と論文式を通した最終的な合格率です。最初の関門である短答式だけを見ると、受験者のおよそ3人に1人が合格しています。

ただし、短答式の合格率が3割台だからといって、簡単な試験という意味ではありません。合格点は年度によって動き、問題が易しい年は75%まで上がりました。平均点との差を見ると、どの年も「平均点+15〜17点」前後が合格の目安になっていることも分かります。

この記事では、国土交通省(土地鑑定委員会)が毎年公表している短答式試験の結果から、合格率・合格点・科目別平均点の推移を整理します。そのうえで、私たち鑑定士の立場から、数字が示す「受かるための得点設計」を解説します。

第1章:不動産鑑定士の短答式試験と合格率の基本

1-1. 短答式試験は「行政法規」と「鑑定理論」の2科目

不動産鑑定士試験は、短答式試験と論文式試験の2段階で行われます。短答式試験の科目は次の2つです。

科目時間・配点出題形式
行政法規2時間・100点択一式
鑑定理論2時間・100点択一式

正式な科目名は「不動産に関する行政法規」と「不動産の鑑定評価に関する理論」で、どちらもマークシート方式です。

民法・経済学・会計学は論文式試験だけの科目で、短答式には出題されません。最初の関門は、行政法規と鑑定理論(不動産鑑定評価基準を中心とする理論)の2科目に絞って準備できます。

受験資格に、年齢・学歴・国籍・実務経験の制限はありません(令和8年不動産鑑定士試験受験案内)。

1-2. 「合格率5%」と「短答式の合格率3割台」の関係

よく見かける「合格率5%前後」は、短答式の受験者数を分母にして、論文式の合格者数を数えた最終合格率です。

令和6年の論文式試験は、受験者847名のうち147名が合格しました(合格率約17.4%、国土交通省土地鑑定委員会「令和6年不動産鑑定士試験の合格者が決定しました」2024年10月18日)。短答式の合格率(約36%)と組み合わせると、次のような計算になります。

  • 短答式の合格率 約36% × 論文式の合格率 約17% ≒ 約6%

短答式の合格者は論文式を2年間受けられるため、厳密な計算ではありません。ただ、「短答式は3人に1人、論文式は6人に1人」という2段階の構造を知っておくと、学習計画の見通しが立てやすくなります。

試験全体の難易度や合格後の仕事については、当事務所の過去記事「不動産鑑定士は『儲かる』のか?試験の難易度から、年収、将来性まで徹底解説」でも解説しています。

1-3. 合格基準は「総得点の比率」+「科目別の最低得点比率」

短答式試験の合格者は、毎年「総得点の○%以上を取得した者」として公表されます。あわせて、科目別に設定された必要最低得点比率(いわゆる足切り)を満たさない人は除くとされています。

つまり、合格には次の2つを同時に満たす必要があります。

  1. 2科目の合計点が、その年の合格基準(例:総得点の70%=140点)以上
  2. どちらの科目も、科目別の最低得点比率を下回らない

科目別の最低得点比率の具体的な数値は、結果の公表資料には書かれていません。片方の科目に極端な苦手を残さない、という方針で準備するのが安全です。

第2章:短答式の合格率・合格点の推移(令和2年〜令和8年)

2-1. 受験者数・合格者数・合格率の推移

国土交通省(土地鑑定委員会)が公表した短答式試験の結果を、年度順に並べます。

年度受験者数合格者数合格率
令和2年1,415人468人33.1%
令和3年1,709人621人36.3%
令和4年1,726人626人36.3%
令和5年1,647人553人33.6%
令和6年1,675人606人36.2%
令和7年2,144人779人36.3%
令和8年2,407人900人37.4%

出典:国土交通省土地鑑定委員会「令和○年不動産鑑定士試験短答式試験合格者の発表」(各年の公表資料)。合格率は合格者数÷受験者数で、小数第2位を四捨五入しています。

合格率は7年間、33〜37%台の狭い幅に収まっています。一方で受験者数は、令和6年の1,675人から令和8年の2,407人へ、2年で4割以上増えました。受験者が増えても合格率は大きく変わっていないため、合格者数も468人(令和2年)から900人(令和8年)へ倍近くに増えています。

2-2. 合格点(合格得点比率)の推移と平均点との差

次に、合格基準と平均点の関係を見ます。合格基準は200点満点に対する比率で、66.25%は132.5点、70%は140点、75%は150点にあたります。

年度合格基準平均点(点)合格点との差(点)
令和2年66.25%117.9+14.6
令和3年70.0%123.9+16.1
令和4年75.0%133.9+16.1
令和5年66.25%115.8+16.7
令和6年70.0%123.2+16.8
令和7年70.0%123.1+16.9
令和8年70.0%123.3+16.7

合格点は66.25%・70%・75%の3通りで、平均点が高い年(令和4年は133.9点)は合格点も上がっています。一方、「合格点−平均点」はどの年も+14.6〜16.9点で安定しています。

ここから言えるのは、短答式は「何点取れば受かる」という固定ラインの試験ではなく、受験者全体の中で上位3分の1強に入れば受かる試験だということです。問題の難易度を自分で調整することはできません。準備の目標は、直近の合格点(70%)に10点の余裕を持たせた総得点の75%(150点)前後を安定して取れる力に置くと、易しい年にも難しい年にも対応できます。

2-3. 科目別の平均点:行政法規は60点前後、鑑定理論は60点台

年度行政法規 平均点鑑定理論 平均点
令和2年52.3点65.6点
令和3年54.3点69.6点
令和4年61.8点72.1点
令和5年54.5点61.3点
令和6年58.1点65.1点
令和7年56.5点66.6点
令和8年60.1点63.2点

各100点満点。出典は2-1と同じです。

7年すべてで、鑑定理論の平均点が行政法規を上回っています。行政法規は30を超える法令から出題されるため、範囲の広さが平均点に表れていると考えられます。令和8年は差が3.1点まで縮まり、鑑定理論も油断できない年でした。

第3章:数字から逆算する、短答式の得点設計と準備

3-1. 目標は「総得点75%」、配分は「理論で稼ぎ、行政法規で崩れない」

合格点が70%(140点)の年に、75%(150点)を取れれば10点の余裕があります。科目別に分けると、たとえば次のような配分が現実的です。

科目目標点考え方
鑑定理論80点基準の文言を正確に覚えれば得点が安定する
行政法規70点頻出の法令(都市計画法・建築基準法など)を確実に取る
合計150点(75%)易しい年の合格点(75%)にも届く

鑑定理論は、不動産鑑定評価基準とその運用上の留意事項から出題されます。条文の言い回しを入れ替えた「ひっかけ」が中心で、基準の文言を正確に覚えるほど得点が安定します。私たち鑑定士が実務で毎日使う基準そのものなので、短答式の段階で正確に覚えておくことは、論文式や合格後の実務修習にもそのまま生きます。基準の覚え方は、当事務所の記事「鑑定理論の暗記はどう進めるのか?鑑定評価基準を『読む・聴く・解く』で定着させる方法」で解説しています。

行政法規は範囲が広いため、満点を狙うより「頻出法令で落とさない」方が効率的です。

3-2. 過去問は「年度別」と「分野別」の両方で回す

合格点が「平均点+15〜17点」で決まる試験では、多くの受験生が正解する標準問題を落とさないことが最優先です。標準問題の多くは、過去の出題の言い換えです。

  • 年度別に解く:時間配分(1問3分)と、2時間の集中力を本番どおりに確かめる
  • 分野別に解く:同じ論点が年度をまたいでどう問われたかを並べて見る

短答式の過去問は、国土交通省の公表資料をもとに、鑑トレの「過去問と解説」で12年分960問を1問ずつ、正解と解説つきで読めます(ログイン不要)。年度別の正解番号だけを確認したい場合は「短答式 解答・正解一覧」が便利です。

3-3. 令和9年の短答式に向けたスケジュールの目安

令和8年の短答式は5月17日(日)、論文式の合格発表は10月16日(金)予定です(令和8年不動産鑑定士試験受験案内)。例年の流れからすると、令和9年の短答式も5月中旬になると考えられます。正式な日程は、令和9年の受験案内(例年2月公表)で必ず確認してください。

5月中旬の本番から逆算すると、10月から始めれば約7か月あります。論文式までを含めた1年間の計画は「不動産鑑定士は独学で合格できるのか?短答式から論文式までの1年間の学習計画を現役鑑定士が解説」もあわせてご覧ください。

時期やること
10〜12月鑑定理論は基準の通読と要点の理解。行政法規は頻出法令から
1〜2月過去問を分野別に。間違えた論点を基準・条文に戻って確認
3〜4月年度別の過去問で時間配分を固める。総得点75%を目標に
5月弱点分野の最終確認と、本番の時間割どおりの演習

なお、短答式に合格すると、合格発表の日から2年を経過する日までに行われる短答式試験が免除されます(翌年以降の受験申込時に免除申請が必要です。令和8年不動産鑑定士試験受験案内)。一度短答式に合格すれば、論文式に2回挑戦できる計算です。

まとめ

不動産鑑定士の短答式試験は、合格率33〜37%台・合格点は総得点の66.25〜75%で推移しており、「平均点+15〜17点」を取った受験生が合格しています。

要点を振り返ります。

  • 短答式は行政法規と鑑定理論の2科目(各100点・択一式)で、民法・経済学・会計学は論文式だけの科目です
  • 合格率は令和2年〜令和8年で33.1〜37.4%。受験者数は2年で4割以上増えましたが、合格率はほぼ一定です
  • 合格点は66.25%・70%・75%の3通りで、平均点との差は毎年+15〜17点と安定しています
  • 目標は総得点75%(150点)。鑑定理論で稼ぎ、行政法規で崩れない配分が現実的です
  • 標準問題を落とさないために、過去問を年度別と分野別の両方で回すことが近道です

これから不動産鑑定士試験に挑戦しようと考えている社会人の方、学生の方へ。合格率の数字だけで判断せず、「何点を、どの科目で取るか」から逆算して準備を始めてください。

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この記事を書いた人

吉田 健人代表取締役・不動産鑑定士

株式会社KRE Appraisal代表。相続・離婚・借地・賃料など、価格が争点になる場面の鑑定評価を扱う。不動産鑑定士(登録 第11191号)。

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