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二次相続で不動産が揉める原因は一次相続にある|実家の分け方3パターンを比較

二次相続(父母の一方が亡くなった後、残された親が亡くなったときの2回目の相続)で不動産をめぐって揉めるご家族の多くは、実は1回目の相続、つまり一次相続の分け方の時点で火種を抱えています。「とりあえず母がすべて相続しておけば、税金もかからないし角が立たない」——そう考えて決めた分け方が、10年後、子ども同士の争いとして表に出てくるのです。
結論から申し上げます。実家と預貯金が主な財産というよくある構成なら、二次相続で揉めにくいのは「一次相続の時点で、実家を将来誰が引き継ぐかを決めておく」分け方です。そして、その分け方を公平にするための代償金(不動産を取得した相続人が、ほかの相続人に支払う埋め合わせのお金)は、実家をいくらと評価するかで数百万円単位で変わります。
この記事では、実家1棟と預貯金という典型的な資産構成をもとに、現物分割・代償分割・換価分割の3パターンを、一次相続と二次相続の両方の視点から比べます。あわせて、代償金の算定になぜ不動産の評価が要るのかを、私たち鑑定士の実務の視点で整理します。
なぜ二次相続で不動産が揉めるのか
一次相続には「親」という調整役がいる
一次相続では、残された親が相続人として話し合いに加わります。子どもたちは「母の前で兄弟げんかはしたくない」と考え、多少の不満があっても飲み込むことが少なくありません。母が実家に住み続けるという前提があれば、実家を誰が引き継ぐかという難しい問題も先送りにできます。
ところが二次相続では、この調整役がいません。相続人は子どもだけになり、先送りしてきた問題が一度に表に出ます。しかも二次相続のときには、親の預貯金が生活費や介護費用で減っていることが多く、残る財産は実家だけということも珍しくありません。
奈良は「実家しかない相続」が起きやすい
奈良県の持ち家率は73.2%で、全国平均の60.9%を大きく上回ります(総務省「令和5年住宅・土地統計調査」)。親が奈良の持ち家に住み、子どもは大阪や県外で暮らしているというご家族は多く、二次相続の時点で「住んでいる子」と「住んでいない子」の利害がはっきり分かれます。
住んでいる子は実家に住み続けたい。住んでいない子は、自分の取り分をお金で受け取りたい。この対立を解く道具が代償分割ですが、ここで実家の値段が争点になります。
二次相続は税金の面でも条件が厳しくなる
一次相続では、配偶者の税額軽減(配偶者が取得した財産のうち1億6,000万円または法定相続分までは相続税がかからない制度。相続税法第19条の2)が使えます。二次相続ではこの制度が使えず、法定相続人も1人減るため、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数。同法第15条)も小さくなります。一次相続で配偶者に財産を集めすぎると、二次相続の税負担が重くなることがある点も知られています。具体的な税額の比較は、税理士にご確認ください。
実家の分け方3パターンを比較する
ここからは、次のような想定ケースで考えます。
- 亡くなった父の財産:奈良市内の実家(土地・建物)と預貯金2,000万円
- 相続人:母(実家に同居)、長男(実家に同居)、長女(大阪在住)
- 実家の時価は3,000万円、相続税評価額(路線価をもとに計算した税金用の価額)は2,300万円と想定
パターン1:母が実家と預貯金をすべて相続する
一次相続では最も揉めにくい分け方です。配偶者の税額軽減があるため、配偶者が取得する分には原則として相続税がかかりません。
しかし問題は二次相続です。母が亡くなったとき、相続人は長男と長女の2人。長男が実家に住み続けるなら、長女には実家の価値の半分を代償金として支払う必要があります。時価3,000万円の実家なら1,500万円です。母の預貯金が残っていれば預貯金で調整できますが、介護費用などで減っていれば、長男が自分の資金で用意しなければなりません。払えなければ、実家を売るか、兄妹の共有にするかという選択を迫られます。
パターン2:長男が実家を相続し、代償分割で調整する
一次相続の時点で、実家は長男、預貯金は母と長女という分け方です。不足する分は長男が長女に代償金を支払って調整します。
この分け方なら、母が亡くなったときに残るのは主に母の預貯金だけです。二次相続で分ける対象がお金になるため、揉める余地は大きく減ります。母の住まいは、長男名義の実家に引き続き住むことで確保できます。母の住む権利をより確かなものにしたい場合は、配偶者居住権(配偶者が亡くなるまで無償で自宅に住み続けられる権利。民法第1028条)を設定する方法もあります。配偶者居住権は母が亡くなると消滅し、その消滅について長男に相続税はかからないため、二次相続の対策として検討されることがあります。
なお、小規模宅地等の特例(自宅の土地の相続税評価額を330㎡まで80%減額できる制度。租税特別措置法第69条の4)は、母が相続した場合は無条件、同居している長男が相続した場合は申告期限まで住み続け保有するなどの要件を満たせば使えます。詳しくは小規模宅地等の特例と土地評価の関係をご覧ください。
パターン3:実家を売却して分ける(換価分割)
実家を売り、代金を相続人で分ける方法です。金額が明確で公平に見えますが、母と長男が住んでいるこのケースでは現実的ではありません。換価分割が選ばれるのは、二次相続の時点で実家が空き家になっている場合が中心です。その場合でも、売却益には各相続人に譲渡所得税がかかる点、売却までの管理や合意形成に手間がかかる点に注意が必要です。
3パターンの比較
| 分け方 | 一次相続 | 二次相続 | 向いている家族 |
|---|---|---|---|
| 母がすべて相続 | 揉めにくく税負担も小さい | 実家の代償金で子ども同士が対立しやすい | 子が実家を継がない予定で、売却も見込む家族 |
| 長男が実家・代償分割 | 代償金の額で調整が必要 | 分ける対象がお金中心になり揉めにくい | 実家を継ぐ子が決まっている家族 |
| 売却して分ける | 住まいを失うため同居中は困難 | 空き家なら公平に分けやすい | 誰も住み続けない家族 |
一次相続で楽をすると、二次相続で苦労する。実家と預貯金が主な財産のご家族ほど、この傾向ははっきり出ます。
代償分割の不動産評価で代償金はいくら変わるか
パターン2を選ぶと、次に問題になるのが代償金の額です。そして代償金は、実家をいくらと評価するかでそのまま動きます。
評価の物差しで長女の取り分が変わる
想定ケースで、長女が法定相続分(4分の1)を受け取り、預貯金から800万円を取得するとします。不足分は長男が代償金で支払います。実家の評価に何を使うかで、代償金は次のように変わります。
| 実家の評価の物差し | 実家の価額 | 長女の取り分(4分の1) | 長男が払う代償金 |
|---|---|---|---|
| 相続税評価額 | 2,300万円 | 1,075万円 | 275万円 |
| 鑑定評価による時価 | 3,000万円 | 1,250万円 | 450万円 |
| 長女側が取った高めの査定 | 3,400万円 | 1,350万円 | 550万円 |
同じ実家でも、物差しの選び方だけで代償金に275万円の差が出ます。払う側の長男は低い評価を、受け取る側の長女は高い評価を主張したくなるのは当然で、ここが代償分割の不動産評価で揉める最大の原因です。
相続税評価額は「分けるための時価」ではない
相続税評価額は、国税庁の財産評価基本通達に基づく税金計算用の価額で、路線価は地価公示価格のおおむね8割の水準に設定されています。税務申告には使えますが、相続人同士で公平に分けるための時価とは性格が違います。私たち鑑定士は、遺産分割のための評価では、不動産鑑定評価基準に従って、その物件が市場で取引されるとすればいくらかという正常価格を求めます。
なお、家庭裁判所の遺産分割の実務では、遺産は原則として分割する時点の時価で評価します。生前贈与などの特別受益(特定の相続人が生前に受けた贈与などで、相続分の計算に持ち戻すもの)が問題になる場合は、相続が始まった時点の評価も必要になり、2時点の評価を求められることがあります。一次相続の話し合いが長引くと、分割時点の価格が変わる可能性がある点も覚えておいてください。
代償金の税務上の扱いにも注意する
代償金を受け取った長女は、その額を相続で取得した財産として相続税を計算します。代償金を時価をもとに決めた場合、相続税の申告では相続税評価額との比率で調整して計算する方法が認められています(相続税法基本通達11の2-10)。また、代償金の代わりに長男が自分の不動産を渡すと、長男に譲渡所得税がかかることがあります。税務の判断は税理士にご確認ください。
二次相続で不動産を揉めさせないための進め方
一次相続の時点で「実家の行き先」を決める
最も効果があるのは、一次相続の話し合いの段階で、実家を将来誰が引き継ぐのかを家族で確認しておくことです。母がすべて相続する場合でも、母に遺言書を書いてもらい、二次相続での分け方と代償金の考え方を残しておけば、子ども同士の対立はかなり抑えられます。
共有名義での先送りは避ける
「とりあえず母と長男、長女の3人の共有に」という分け方は、一見公平ですが、二次相続で母の持分がさらに子どもに分かれ、売るにも貸すにも全員の同意が必要になります。共有の問題点は共有名義の不動産を分けるには?共有物分割と鑑定評価で詳しく解説しています。
代償金の基礎になる時価を第三者に出してもらう
代償分割を選ぶなら、実家の時価は当事者のどちらかが用意した査定ではなく、中立の第三者が出した評価を使うことをおすすめします。双方が同じ数字を見て話し合えるからです。遺産分割で評価が食い違う構造は遺産分割で不動産が絡むと揉める理由と、公平な時価の出し方でも解説しています。
費用の目安は、戸建住宅の鑑定評価書が30万円〜、金額の目安を知るための価格等調査報告書が15万円〜です(いずれも税別)。相続開始時と現在の2時点の評価が必要な場合は、+10万円〜が目安です。詳しくは料金のご案内をご覧ください。代償金の差が数百万円になり得ることを考えると、話し合いの最初に一つの物差しを用意しておく意味は大きいと考えます。
まとめ
二次相続で不動産が揉めるかどうかは、一次相続の分け方でほぼ決まります。実家と預貯金が主な財産のご家族ほど、一次相続の時点で実家の行き先と、その価値の物差しを決めておくことが大切です。要点を振り返ります。
- 二次相続では調整役の親がいなくなり、先送りしてきた実家の問題が子ども同士の対立として表に出る
- 母がすべて相続する分け方は一次相続では楽だが、二次相続で実家の代償金をめぐる対立を生みやすい
- 一次相続で実家を継ぐ子に相続させる代償分割は、二次相続で分ける対象をお金中心にでき、揉めにくい
- 代償金は実家の評価の物差しで変わり、想定ケースでは相続税評価額と査定の間で275万円の差が出た
- 相続税評価額は税金計算用の価額であり、相続人同士で公平に分けるための時価とは性格が違う
親の相続を控えたご家族、そして相続人の代償分割や二次相続対策を支援する税理士の方。分け方を決める前に、実家の時価を一度確かめておくと、一次相続でも二次相続でも話し合いの土台がぶれません。
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