COLUMN

不動産鑑定の「意見書」とは?価格意見書・検証意見書の中身、費用、使える場面

公開 執筆 不動産鑑定士 吉田健人(登録 第11191号)
不動産鑑定の意見書と鑑定評価書の違い

不動産鑑定の「意見書」は、法律で定められた書面の名前ではありません。 不動産鑑定士が出す「価格についての意見書」は、多くの場合、不動産鑑定評価基準に則らずに目的と範囲を限定して価格を調べた報告書(当事務所でいう価格等調査報告書)か、他人が作った評価書や査定書を検証した意見(当事務所でいうセカンドオピニオン)のどちらかです。費用は3万〜15万円程度が中心で、鑑定評価書(30万円前後〜)より安く早い一方、税務署や裁判所に価格の根拠として出す場面では鑑定評価書が原則になります。

「意見書を取れば足りるのか、鑑定評価書が要るのか」は、書面の名前ではなく中身と提出先で決まります。この記事では、世の中で「意見書」と呼ばれる書面の種類、それぞれの拠り所、使える場面、費用と期間、記載項目のサンプル構成を、私たち鑑定士の立場から整理します。

「意見書」と呼ばれる書面は4種類ある

呼び名と中身は一致しない

当事務所が2026年9月に、料金を公開している全国の不動産鑑定業者114社を調べたところ、鑑定評価書より簡易な成果物の呼び名はばらばらでした。延べ数で、調査報告書59、意見書33、机上評価20、査定15、価格調査13、簡易鑑定8、価格等調査5です。同じ「意見書」でも、現地調査をする事務所もあれば、机上でA4数枚にまとめる事務所もあります。名前ではなく、次の4つのどれにあたるかで見分けてください。

書面作成者拠り所中身
① 査定書(価格査定の意見)不動産会社(宅地建物取引業者)宅地建物取引業法第34条の2第2項売却の仲介のために示す「売れそうな価格」と根拠
② 価格についての意見書・調査報告書不動産鑑定士価格等調査ガイドライン(不動産鑑定評価基準に則らない調査)目的と調査範囲を限定して求めた価格
③ 検証意見書(セカンドオピニオン)不動産鑑定士不動産鑑定評価基準に照らした検証他人の評価書・査定書の前提・事例・計算への意見
④ 鑑定評価書不動産鑑定士不動産の鑑定評価に関する法律、不動産鑑定評価基準基準に則って判定した鑑定評価額と決定の理由

査定書は「鑑定評価書ではない」と明記される

①の査定書について、国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」は、宅建業者が価額の根拠を書面で示すときは、不動産の鑑定評価に関する法律に基づく鑑定評価書でないことを明記し、他の目的にみだりに使わないよう依頼者に求めることとしています。根拠の明示は法律上の義務なので、査定の費用は依頼者に請求できないともされています。不動産会社の「意見書」が無料なのはこのためで、売却以外の場面での利用は想定されていません。

鑑定士の意見書も「価格を示せば」ガイドラインの対象

②と③は、どちらも不動産鑑定士が作る書面です。国土交通省の「不動産鑑定士が不動産に関する価格等調査を行う場合の業務の目的と範囲等の確定及び成果報告書の記載事項に関するガイドライン」(平成21年8月策定。以下「価格等調査ガイドライン」)は、鑑定士が価格を示す業務を広く対象にしています。運用上の留意事項では、価格を示すこと自体が最終目的でなくても、業務の過程で価格を示すものは対象に含まれるとされています。つまり、鑑定士の「意見書」は名前が何であれ、価格を示す以上はこのガイドラインのルールに従います。

不動産鑑定評価基準に則るか ― ガイドラインでの位置づけ

基準に則らない調査ができる場合

価格等調査ガイドラインの運用上の留意事項は、不動産鑑定評価基準に則らない価格等調査を行える場合を、おおむね次のように整理しています。

  • 調査した価格が依頼者の内部での使用にとどまる場合
  • 公表・開示・提出されても、利用者の判断に大きな影響を与えないと判断される場合
  • 公表されず、開示・提出先のすべての承諾が得られた場合
  • 不動産鑑定評価基準に則ることができない場合
  • そのほか、依頼目的や利用者の範囲などから合理的な理由がある場合

たとえば会社の役職員が売買の意思決定に使う、金融機関が融資の社内判断に使う、といった使い方が「内部での使用」の典型です。反対に、利用者の判断に大きな影響を与える一定の場面(投資法人の資産の評価など)では、基準に則った鑑定評価が求められます。

確認書と「基準に則らない旨」の記載

鑑定士は、ご契約までに依頼目的・利用者の範囲・調査の範囲などを確定し、その内容を書面(確認書)で依頼者にお渡しします。基準に則らない調査の成果物には、その旨と理由が記載されます。手元の「意見書」が基準に則ったものかどうかは、この記載を見れば分かります。基準に則らない旨が書かれていれば、それは②の価格等調査の成果物です。

使える場面 ― 税務署・裁判所・金融機関・交渉

提出先・場面査定書価格についての意見書・調査報告書検証意見書鑑定評価書
相手方との交渉(遺産分割・財産分与・売買)△ 相手が受け入れれば◯ 話し合いの土台◯ 相手方の数字への反論◯
税務署(相続税の時価申告など)×△ 案件による―◯ 原則
裁判所・調停× 反論に耐えにくい△ 暫定的な資料◯ 相手方鑑定の検証◯ 原則
金融機関(融資の補強資料)△△ 金融機関の方針による―◯
社内の意思決定・監査人への説明△◯ 内部使用の典型―◯ 減損など外部説明

税務署に出す場合

相続税や贈与税の財産の価額は、取得の時における時価によるとされています(相続税法第22条)。路線価などの通達による評価ではなく、時価として鑑定の結果を用いる場合、税務署に対して価格の根拠を示すことになるため、不動産鑑定評価基準に則った鑑定評価書が原則です。意見書や調査報告書で足りるかは、物件と申告内容によって判断が分かれるため、税理士にご確認ください。

裁判所・調停に出す場合

当事者が依頼した鑑定士の書面は、書証として提出でき、その信用性は裁判所が判断します。価格そのものを主張するなら鑑定評価書、相手方が出した鑑定評価書や査定書の問題点を指摘するなら検証意見書、と役割を分けて使うのが実務的です。期日までに鑑定評価書が間に合わないときに、価格等調査の成果物を暫定的に出し、後から鑑定評価書に切り替える使い方もあります。訴訟の進め方の判断は代理人の弁護士の領域です。裁判の場面での評価の進め方は裁判・調停での不動産評価にまとめています。

費用と期間の比較

相場(114社の公開料金)

同じ調査で、鑑定評価書より簡易な成果物の最低額の中央値は12.0万円(下位25%〜上位25%で8.0万〜15.0万円、83社)、セカンドオピニオンの料金を明記していたのは12社で中央値5.0万円でした(税別換算)。現地調査をしない机上の意見書は3〜8万円、現地調査を伴う調査報告書は鑑定評価書の5〜8割(8〜16万円)程度の設定が見られました。

当事務所の料金と期間(税別)

成果物料金期間の目安向いている場面
セカンドオピニオン(検証意見書)5万円〜1〜2週間相手方や業者の提示額が妥当か確かめたい
価格等調査報告書15万円〜約2週間話し合いの土台、売却・社内検討
鑑定評価書土地・戸建30万円〜、マンション1室・借地権・底地・収益物件40万円〜実地調査から約3週間税務署・裁判所・金融機関への提出

調停・訴訟など争いのある案件は、価格等調査30万円・鑑定評価書60万円を起点にお見積りします。

計算例 ― 意見書から始めて鑑定評価書に切り替える

戸建住宅の財産分与で、協議段階では価格等調査報告書、調停に移ったら鑑定評価書、という段階を踏む場合を考えます。

進め方1段階目2段階目お支払いの合計
当事務所(切り替え時に差し引き)価格等調査報告書 15万円鑑定評価書 30万円 − 15万円 = 15万円30万円
差し引きがない場合価格等調査報告書 15万円鑑定評価書 30万円45万円

当事務所では、価格等調査のあとに鑑定評価書へ切り替える場合、価格等調査の料金を差し引いてお見積りします。そのため、協議で決着すれば15万円で済み、調停に進んでも合計は最初から鑑定評価書を取った場合と同じ30万円です(いずれも税別。調停で争訟対応が必要な場合は、上の起点額でお見積りします)。

記載項目のサンプル構成

価格についての意見書(価格等調査報告書)の構成例

当事務所の価格等調査報告書は、次の項目で構成します。お手元の「意見書」を確かめるときのチェックリストとしてもお使いください。

項目記載する内容
1. 依頼者・利用者の範囲誰が、どこまでの範囲で使うか(例:依頼者と配偶者の協議に限る)
2. 依頼目的例:財産分与の協議資料
3. 基準に則らない旨と理由不動産鑑定評価基準に則っていないこと、則らない理由
4. 対象不動産所在・地番・家屋番号・面積、権利の内容
5. 価格時点と価格の性格いつ時点の、どのような性格の価格か
6. 調査の範囲現地調査の有無、内覧の有無、確認できなかった事項
7. 調査価格と決定の理由採用した事例・手法、補正の考え方
8. 作成した鑑定士不動産鑑定士の氏名・登録番号と署名、鑑定業者の登録番号

検証意見書(セカンドオピニオン)の構成例

検証意見書では、相手方の書面の結論だけでなく、どの前提や数字が結論を動かしているかを示します。

検証の論点相手方書面の内容(例)検証結果(例)
価格時点1年半前の時点手続が求める時点と離れており、その後の市況変動が反映されていない
採用事例駅から遠い事例が中心対象により近い成約事例が除外されている
補正角地の加算なし個別の補正が一部漏れている
結論への影響―上記を直すと結論がどちらの方向にどの程度動くか

検証の結果、相手方の書面に大きな問題がなければ、その旨を率直にお伝えします。相手方の数字に反論するときの考え方は相手方の評価に反論する3つの着眼点でも解説しています。

意見書・鑑定評価書を当事務所にご依頼いただく場合

ご依頼の流れ

  1. お問い合わせ(フォーム・お電話・チャット)
  2. 無料相談(30分程度)で、提出先・期限・手元の資料を伺い、意見書で足りるか鑑定評価書が要るかをご提案
  3. お見積り(1〜2営業日)。総額と納期をお示しします
  4. 確認書の交付、ご契約・お振込み。ご入金の確認後に着手します
  5. 資料の確認・調査、納品とご説明

ご用意いただく資料

固定資産税の課税明細書、購入時の売買契約書、建物の図面など、お手元にあるものだけで構いません。セカンドオピニオンの場合は、検証の対象となる相手方の査定書・鑑定評価書・提示額の資料をご用意ください。登記事項証明書や役所の資料は当事務所で取得します。料金の詳細は料金のご案内、場面別の総額例は不動産鑑定の費用相場をご覧ください。

不動産鑑定の意見書についてのQ&A

Q1. 不動産鑑定の意見書とは何ですか?

法律上の書面名ではなく、不動産鑑定士が出す簡易な成果物や検証の書面の呼び名です。多くは、不動産鑑定評価基準に則らずに目的と範囲を限定して価格を調べた報告書か、他人の評価書・査定書を検証した意見書です。基準に則っているのは鑑定評価書だけです。

Q2. 意見書の費用はいくらですか?

料金を公開している鑑定業者114社では、簡易な成果物の最低額の中央値が12.0万円、セカンドオピニオンは中央値5.0万円でした(2026年9月当事務所調べ・税別換算)。当事務所はセカンドオピニオン5万円〜、価格等調査報告書15万円〜(税別)です。

Q3. 意見書は税務署や裁判所に出せますか?

提出はできますが、価格の根拠として重視されるかは別問題です。税務署に時価の根拠を示す場合や、裁判所で価格そのものを主張する場合は、鑑定評価書が原則です。相手方の鑑定評価書の問題点を指摘する目的なら、検証意見書が有効です。税務上の取扱いは税理士に、訴訟での使い方は弁護士にご確認ください。

Q4. 意見書を取ったあとで鑑定評価書が必要になったらどうなりますか?

当事務所では、価格等調査報告書のあとに鑑定評価書へ切り替える場合、価格等調査の料金を差し引いてお見積りします。戸建住宅なら合計30万円(税別)で、最初から鑑定評価書を取った場合と同じです。

まとめ

「意見書」という名前だけでは、その書面が何に使えるかは分かりません。見分けるポイントは、作成者が不動産会社か不動産鑑定士か、不動産鑑定評価基準に則っているか(則らない旨の記載があるか)、利用者の範囲がどう定められているか、の3つです。

  • 不動産会社の査定書は売却の仲介のための意見で、鑑定評価書でない旨が明記される
  • 鑑定士の価格意見書・調査報告書は、価格等調査ガイドラインに基づき目的と範囲を限定した調査
  • 検証意見書は、相手方の評価の前提・事例・計算を検証する書面
  • 税務署・裁判所に価格の根拠を示すなら、鑑定評価書が原則

相手方や業者から示された金額に納得がいかない方、遺産分割や財産分与の話し合いの土台がほしい方、意見書で足りるか鑑定評価書が要るか迷っている方は、ぜひ一度ご相談ください。初回の無料相談も承っております。提出先を伺ったうえで、費用を抑えられる方法から順にご提案します。お問い合わせはこちらです。

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この記事を書いた人

吉田 健人代表取締役・不動産鑑定士

株式会社KRE Appraisal代表。相続・離婚・借地・賃料など、価格が争点になる場面の鑑定評価を扱う。不動産鑑定士(登録 第11191号)。不動産鑑定業者登録 東京都知事(1)第2987号。

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