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祖父名義の土地の相続はどう進める?数次相続の登記と評価の順番

公開 執筆 不動産鑑定士 吉田健人
田畑と山並みを望む古い和室の座卓に置かれた木箱と印鑑、封筒

「実家の土地の登記簿を取ったら、名義が亡くなった祖父のままだった」——奈良で相続のご相談を受けていると、こうした祖父名義の土地の相続に行き当たる方が少なくありません。父の代で名義変更をしないまま父も亡くなり、気づけば叔父・叔母やいとこまで権利を持っている。何から手をつければよいのか、途方に暮れるのも無理はありません。

結論から申し上げます。祖父名義の土地は、①戸籍で「いま誰が相続人か」を確定し、②全員で遺産分割協議をまとめ、③相続登記をする、という順番で進めます。そして土地の評価は、祖父が亡くなった当時の価格ではなく、分ける時点の時価で行うのが原則です。相続登記の義務化により、祖父の代の相続にも2027年3月31日という期限が付いています。

この記事では、数次相続(相続手続きが終わらないうちに次の相続が起きた状態)の仕組みと登記の進め方、そして私たち鑑定士の立場から、評価をいつ・どの時点で行うべきかを整理します。

祖父名義の土地が「数次相続」になる仕組み

数次相続と代襲相続の違い

数次相続は、祖父の相続で相続人になった父が、遺産分割や登記を終える前に亡くなり、父の相続人(母や子)が父の立場を引き継ぐ状態です。これに対し代襲相続は、父が祖父より先に亡くなっていた場合に、孫が父に代わって祖父の相続人になる制度です(民法887条2項)。

違いが大きく出るのは、父の配偶者(母)の扱いです。代襲相続なら母は祖父の相続に関与しませんが、数次相続では母も父の相続人として協議に加わります。同じ「祖父名義の土地」でも、父が亡くなった順番によって、話し合いに参加する顔ぶれが変わるのです。

相続人は何人になるか——想定されるケース

次のような家族を想定します。祖父が1995年に亡くなり、相続人は祖母・父・叔母の3人。その後、祖母が2005年、父が2018年(相続人は母・あなた・弟)、叔母が2020年(相続人は夫と子2人)に亡くなりました。この間、祖父名義の土地は一度も名義変更されていません。

法定相続分(民法900条)で順に計算すると、現在の権利者と持分は次のとおりです。土地の時価を1,800万円と仮定しています。

権利者続柄持分1,800万円換算
母父の配偶者4分の1450万円
あなた父の子8分の1225万円
弟父の子8分の1225万円
叔母の夫叔母の配偶者4分の1450万円
いとこA叔母の子8分の1225万円
いとこB叔母の子8分の1225万円

祖父が亡くなった時点では3人だった相続人が、30年で6人に増えました。しかも叔母の夫は、祖父と血縁のない方です。放置が長引くほど、面識の薄い相手との話し合いが避けられなくなります。

相続登記の義務化で、祖父名義の土地にも期限がある

過去の相続は2027年3月31日が期限

2024年4月1日から、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の相続登記が義務になりました(不動産登記法76条の2)。この義務は施行前に発生した相続にも及び、祖父の代の相続であれば2027年3月31日が期限です(施行日と「知った日」の遅いほうから3年)。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になります(同法164条1項)。義務化の全体像は相続登記の義務化とは?奈良の実家を放置する3つのリスクで解説しています。

協議が間に合わないときは相続人申告登記

相続人が多く、期限までに遺産分割がまとまりそうにない場合は、相続人申告登記(自分が相続人であることを法務局に申し出る簡易な手続き)で義務を果たせます(不動産登記法76条の3)。単独で申し出ることができ、登録免許税もかかりません。ただし、これは「名義を移す」手続きではありません。売却や担保設定には、最終的に遺産分割と相続登記が必要です。

登録免許税の免税措置

相続で土地を取得した人が、登記をしないまま亡くなった場合、その人を名義人とするための相続登記には登録免許税がかかりません(租税特別措置法84条の2の3)。令和7年度税制改正で、適用期限は2027年3月31日まで延長されています。上のケースでいえば、祖母・父・叔母を名義人とする段階の登記が対象になり得ます。適用の可否は、登記を依頼する司法書士にご確認ください。

数次相続の登記はどう進めるか

戸籍を集め、相続関係を図にする

最初の作業は、祖父の出生から死亡までの戸籍と、途中で亡くなった祖母・父・叔母それぞれの出生から死亡までの戸籍、そして現在の相続人全員の戸籍を集めることです。2024年3月からは戸籍の広域交付により、本籍地が奈良以外の方でも最寄りの市区町村窓口で請求できるようになりました(ただし請求できるのは本人・配偶者・直系の親族の戸籍に限られ、叔母など傍系の方の戸籍は従来どおり本籍地への請求が必要です)。集めた戸籍をもとに、誰がどの立場で権利を持つかを示す相続関係説明図を作ります。

遺産分割協議書は「誰の相続人として」署名するか

数次相続の遺産分割協議書では、各人が「祖父の相続人」なのか「祖父の相続人である父の相続人」なのか、立場を明記して署名・押印します。上のケースなら、母・あなた・弟は「父の相続人の地位において」、叔母の夫といとこは「叔母の相続人の地位において」協議に参加します。6人全員の実印と印鑑証明書がそろわなければ、協議は成立しません。

中間省略登記ができるケース・できないケース

原則として、登記は祖父から祖母・父・叔母へ、さらにその先へと、相続の順に1件ずつ申請します。例外として、中間の相続人が1人だけ(遺産分割や相続放棄の結果として1人になった場合を含む)であれば、中間の登記を省略して、祖父から最終の取得者へ1件で名義を移せます(昭和30年12月16日民事甲第2670号民事局長回答など)。

上のケースでも、遺産分割協議の結果として「祖父の土地は父が単独で取得し、父の相続ではあなたが単独で取得する」とまとめれば、祖父からあなたへの1件の申請で済む可能性があります。どの形が可能かは協議の内容しだいですので、司法書士にご確認ください。

評価はどの時点で、何のために行うか

評価の基準時は「祖父の死亡時」ではなく「分割時」

ここが、私たち鑑定士が最もお伝えしたい点です。祖父の相続が30年前でも、遺産分割で土地の価値を分け合うときは、原則として遺産分割時(家庭裁判所の審判であれば審判時)の時価を基準にします。これは家庭裁判所の実務で定着した考え方です。30年前の購入価格や、当時の固定資産税評価額を持ち出しても、話し合いの物差しにはなりません。

一方、相続税の申告が問題になる場面では、相続開始時点の価額が基準です。ただし、祖父の相続が数十年前であれば、税務上の扱いが今から問題になる場面は限られます。気になる点があれば税理士にご確認ください。

代償金はいくらになるか——評価額の差がそのまま効く

先ほどのケースで、あなたが土地を単独で取得し、他の5人に代償金(取得しなかった相続人に持分相当額を支払うお金)を払う形でまとめるとします。支払う額は、土地の時価からあなたの持分8分の1を除いた8分の7です。

土地の評価額代償金の総額うち母・弟の分うち叔母側3人の分
1,500万円1,312.5万円562.5万円750万円
1,800万円1,575万円675万円900万円
2,100万円1,837.5万円787.5万円1,050万円

評価額が1,500万円か2,100万円かで、支払う代償金には約525万円の開きが生じます。関係の薄い相続人ほど「その金額の根拠は何か」を問います。当事者の一人が持ち出した査定額では、相手が納得しないことも多いでしょう。第三者である鑑定士の評価が、ここで意味を持ちます。遺産分割と時価の関係は遺産分割で不動産が絡むと揉める理由と、公平な時価の出し方でも詳しく解説しています。

奈良の祖父名義の土地に多い、評価の難しさ

奈良で祖父名義のまま残っている土地は、市街化調整区域(原則として建物の建築が抑制される区域)の農地や宅地、中山間地の山林であることが少なくありません。奈良県の令和8年地価調査(価格時点2026年7月1日)では、住宅地の変動率が市街化区域で0.0%(横ばい)だったのに対し、市街化調整区域はマイナス1.3%、都市計画区域外はマイナス2.6%でした。同じ県内でも、区域によって値動きの方向がまったく違います。

こうした土地は取引事例が乏しく、「相場」を誰も示せないまま協議が止まりがちです。鑑定評価では、不動産鑑定評価基準に基づき、近隣の取引事例、造成や境界確定にかかる費用、建築の可否といった法規制を総合して価格を導きます。相続人の話し合いの材料であれば、目的と範囲を限定した価格等調査報告書で足りる場合もあります。

話がまとまらないときに知っておきたい制度

10年を過ぎると「特別受益」などを主張できなくなる

2023年4月施行の改正民法により、相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、原則として特別受益(生前贈与など)や寄与分(介護などへの貢献)を考慮した具体的相続分を主張できず、法定相続分で分けることになりました(民法904条の3)。施行前に始まった相続には猶予期間があり、祖父の相続のように古いものは2028年3月31日が区切りです。「父は祖父の介護をしていた」といった事情を主張したいなら、それまでに家庭裁判所へ遺産分割の申立てをする必要があります。具体的な判断は弁護士にご確認ください。

連絡の取れない相続人がいる場合

相続人の中に行方の分からない方がいれば、家庭裁判所で不在者財産管理人を選任してもらい、その管理人が協議に加わる方法があります。また、相続開始から10年を経過した土地では、所在等不明共有者の持分を裁判で取得する制度(民法262条の2)も使えます。いずれの手続きでも、持分に見合う金額の算定が必要になり、土地の時価の裏付けが求められます。

手放すという選択肢

誰も土地を利用する予定がなく、売却も難しい場合は、相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらう道もあります。ただし、申請には相続登記を済ませていることが前提です。費用や要件は相続土地国庫帰属制度は奈良で使えるか?で比較しています。

まとめ

祖父名義の土地の相続は、放置するほど相続人が増え、話し合いが難しくなります。2027年3月31日の登記期限を見すえ、相続人の確定・遺産分割・相続登記の順に進めること、そして評価は「分ける時点の時価」で行うことが要点です。

要点を振り返ります。

  • 父が祖父より後に亡くなっていれば数次相続となり、母など父の相続人も協議に加わる
  • 想定されるケースでは、30年の放置で権利者が3人から6人に増え、血縁のない相続人も含まれた
  • 祖父の代の相続も登記義務の対象で、期限は2027年3月31日。間に合わなければ相続人申告登記で義務を果たせる
  • 中間の相続人が1人に定まれば、中間省略による1件の登記で済む場合がある
  • 遺産分割の評価は分割時の時価が基準。評価額が1,500万円か2,100万円かで代償金は約525万円変わる
  • 相続開始から10年を過ぎた古い相続は、特別受益・寄与分の主張に2028年3月31日の区切りがある

祖父や曽祖父の名義のまま土地が残っている相続人の方、叔父・叔母やいとことの話し合いを控えている方、そうした案件を扱う司法書士・弁護士の先生方にとって、客観的な時価は協議を前に進めるための共通の物差しになります。

祖父名義の土地の評価でお悩みの方は、奈良出身の鑑定士による初回無料相談をご利用ください。相続のための鑑定評価のページもあわせてご覧のうえ、お問い合わせからお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

吉田 健人代表取締役・不動産鑑定士

株式会社KRE Appraisal代表。相続・離婚・借地・賃料など、価格が争点になる場面の鑑定評価を扱う。不動産鑑定士(登録 第11191号)。

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