COLUMN
賃料鑑定とは?費用はいくら? ― 家賃増減額請求・調停で使える賃料の鑑定評価

「テナントから家賃の減額を求められた」「長年据え置いた賃料を値上げしたいが、いくらが適正なのか分からない」――賃貸オーナー様や企業の管財ご担当者様から、こうしたご相談をいただきます。
賃料の妥当性を当事者の感覚だけで主張しても、交渉は平行線をたどりがちです。そこで登場するのが賃料鑑定ですが、「賃料鑑定とは何か」「費用はいくらかかるのか」という基本が分からず、依頼をためらう方も多いのではないでしょうか。
本記事では、賃料鑑定の中身と費用感、そして家賃増減額請求の場面での活用方法を、私たち鑑定士が整理します。
賃料鑑定とは ― 新規賃料と継続賃料
賃料鑑定とは、不動産鑑定士が対象不動産の適正な賃料を、不動産鑑定評価基準に則って求める鑑定評価です。求める賃料には大きく2種類があります。
| 区分 | 場面 | 特徴 |
|---|---|---|
| 新規賃料 | これから新たに貸す・借りる場合 | 市場の需給を反映した水準 |
| 継続賃料 | 既存の契約を続けながら賃料を改定する場合 | 当事者間の契約の経緯を考慮 |
新規賃料 ― 市場水準の賃料
新規賃料は、その時点の市場で新たに契約するならいくらか、という賃料です。賃貸事例との比較や、元本価値に対する利回りの検討などを通じて求めます。紛争の場面だけでなく、法人がグループ会社間や役員との間で賃貸借を始める際に、恣意的でない賃料設定の根拠として新規賃料の鑑定を活用するケースも増えています。
継続賃料 ― 契約の経緯を踏まえた賃料
継続賃料は、既に契約関係にある当事者間の賃料改定で問題になる賃料です。直近合意時点(当事者が現行賃料に合意した時点)からの経済事情の変動や当事者間の経緯を考慮するため、市場の新規賃料水準とは一致しないのが通常です。差額配分法・利回り法・スライド法・賃貸事例比較法という複数の手法を適用して判断します。
家賃増減額請求と賃料鑑定
借地借家法32条の借賃増減請求権
建物賃料については、借地借家法32条(借賃増減請求権。租税等の負担の増減、経済事情の変動、近傍同種の建物の賃料との比較により賃料が不相当となったとき、当事者が将来に向かって増減を請求できる制度)が根拠になります。増額だけでなく、借主側からの減額請求にも使われます。
まずは調停から ― 調停前置
賃料増減額の紛争は、いきなり訴訟を提起するのではなく、原則としてまず調停を申し立てる必要があります(調停前置)。調停・訴訟のいずれの段階でも、「不相当となったこと」と「適正な賃料水準」を裏づける資料が求められます。なお、請求の可否や手続の進め方といった法的判断は、弁護士にご確認ください。
調停・訴訟での鑑定評価書の位置づけ
当事者が依頼する賃料鑑定は、調停・訴訟において主張を裏づける証拠資料となります。訴訟では裁判所が選任する鑑定人による鑑定が行われることもありますが、その場合でも、事前に自らの主張水準を鑑定評価書で固めておくことが交渉・和解の局面で意味を持ちます。とくに高級マンション・タワーマンションは階層や眺望による賃料格差が大きく、この格差をどう補正して比較するかが結論を左右するため、同種物件の評価経験がある鑑定士かどうかも選定のポイントです。
交渉段階での活用も有効です
賃料鑑定は裁判のためだけのものではありません。調停に進む前の任意交渉で鑑定評価書を提示し、早期に合意へ至るケースも多くあります。紛争の初期段階でのご相談をお勧めします。
賃料鑑定の費用と依頼の流れ
費用の目安
継続賃料(増額・減額)の鑑定費用目安
40万円〜
新規賃料の鑑定は30万円〜。物件の規模等により変動します(税別)
継続賃料の鑑定は、直近合意時点の確定や契約経緯の分析が必要なため、一般に新規賃料より作業量が多くなります。なお、調停・訴訟など争訟案件は、価格等調査30万円・鑑定評価書60万円(税別)を起点にお見積りします。作業期間は物件や論点の複雑さにより異なりますので、お見積りの際に個別にご案内します。
ご依頼時にご用意いただきたい資料
お見積り・ご依頼の際は、賃貸借契約書、過去の改定の経緯が分かる書面、現行賃料と共益費等の内訳が分かる資料をご用意いただくとスムーズです。弁護士の先生と連携する案件では、主張構成に沿った価格時点・前提条件の設定が重要になるため、受任前の段階からの三者打ち合わせにも対応しています。
まとめ
- 賃料鑑定には新規賃料と継続賃料があり、賃料改定の紛争で問題になるのは主に継続賃料
- 家賃増減額請求の根拠は借地借家法32条で、紛争は原則として調停から始まる
- 鑑定評価書は交渉・調停・訴訟の各段階で主張を裏づける資料となる
- 費用の目安は新規賃料の鑑定30万円〜、継続賃料の鑑定40万円〜(税別)
賃料改定にお悩みのオーナー様、賃料紛争を受任された弁護士の先生は、ぜひ一度ご相談ください。初回の無料相談で、鑑定評価の必要性と概算費用をご案内します。





