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旧法借地権と定期借地権の違いとは?契約の種類で借地の価値はここまで変わる

公開 執筆 不動産鑑定士 吉田健人
明るい和室の座卓に、紐で束ねた古い和紙の契約書と新しい白い書類が並び、手前に眼鏡と湯呑み、奥の縁側越しに緑の庭が見える

「借地の上に建つ実家を相続したのですが、契約書を見ると『定期借地』と書いてあります。普通の借地権と同じように売れるのでしょうか」。奈良県内で借地上の建物を相続された方や、借地権付きの家の売買を検討している方から、当事務所にはこうしたご相談が寄せられます。

旧法借地権と定期借地権の違いを一言で言えば、「期間が来ても原則として続く権利」か「期間が来たら必ず終わる権利」かです。そして断言します。この違いは、同じ立地・同じ広さの土地でも、借地権の価値を数倍の幅で動かします。契約の種類を確かめないまま、借地権割合や近所の相場だけで値段を考えるのは危険です。

この記事では、借地借家法と旧借地法の区分ごとに存続期間と更新の有無を整理し、権利の種類によって価格がどう変わるのかを、想定されるケースの数値例とともに私たち鑑定士の視点で解説します。

旧法借地権と定期借地権の違いは「更新があるかどうか」

借地の契約は大きく3種類に分かれる

借地権(他人の土地を借りて、自分の建物を所有するための権利)は、契約した時期と契約の形式によって、適用される法律と中身が変わります。

  • 旧法借地権:平成4年(1992年)7月31日以前に設定された借地権。大正10年制定の借地法(旧借地法)が適用されます
  • 普通借地権:平成4年8月1日施行の借地借家法のもとで設定された、更新のある借地権
  • 定期借地権:同じく借地借家法で新たに設けられた、更新のない借地権

注意したいのは、平成4年8月以降に契約を更新した借地でも、もともとの設定が平成4年7月以前であれば、旧借地法が引き続き適用される点です(借地借家法附則第6条)。「最近更新したから新法のはず」という思い込みはよくある誤解です。

旧法借地権は事実上「終わらない」権利

旧借地法では、存続期間は建物の構造で分かれます。堅固な建物(鉄筋コンクリート造など)は期間の定めがなければ60年、定める場合は30年以上。非堅固な建物(木造など)は定めがなければ30年、定める場合は20年以上です。更新後の期間は堅固30年・非堅固20年となります。

ただし本質は年数ではありません。地主が更新を拒むには「正当事由」が必要で、裁判所はこれを厳格に判断してきました。その結果、旧法借地権は借地人が望む限り、事実上半永久的に続く権利として扱われてきました。旧市街に昭和以前から続く借地が多く残っているのはこのためです。

定期借地権は期間満了で確定的に終わる

これに対し定期借地権は、更新がなく、期間満了とともに土地を地主に返す契約です。借地借家法は次の3類型を定めています。

類型存続期間契約の方式期間満了時
一般定期借地権(第22条)50年以上書面または電磁的記録原則として更地で返還
事業用定期借地権(第23条)10年以上50年未満公正証書原則として更地で返還
建物譲渡特約付借地権(第24条)30年以上方式の定めなし地主が建物を買い取る

住宅で使われるのは主に一般定期借地権、ロードサイドの店舗などで使われるのが事業用定期借地権です。一般定期借地権の契約は書面で行う必要がありましたが、令和4年(2022年)5月の改正で電磁的記録による契約も認められました。

旧法借地権と定期借地権で価値が変わる理由

価値の源泉は「残りの期間」と「借り得」

借地権の経済的な価値は、おおまかに言えば、その土地を将来にわたって使い続けられる利益のうち、地代を払ってもなお手元に残る部分です。別の記事「借地権割合60%なのに半値でしか売れない?相続税評価額と売却価格がズレる理由」でも解説したとおり、適正な地代と実際の地代との差、いわゆる「借り得」が大きいほど価値は高くなります。

ここに「期間」の要素が加わります。旧法借地権は事実上期間が終わらないため、借り得が続く年数も長く見込めます。一方、定期借地権は満了日が決まっているため、残存期間が短くなるにつれて価値は確実に減っていき、満了時にはゼロになります。

不動産鑑定評価基準も「借地権の態様」を重視している

不動産鑑定評価基準(国土交通省)は、借地権の鑑定評価にあたって総合的に勘案すべき事項として、将来の賃料改定の実現性、借地権の態様及び建物の残存耐用年数、契約締結の経緯並びに経過した借地期間及び残存期間、授受された一時金の額などを挙げています。

「借地権の態様」とは、まさに旧法か新法か、普通借地か定期借地かといった権利の種類のことです。私たち鑑定士が借地の評価を受けたとき、最初に契約書の締結日と条項を確認するのはこのためです。

相続税の評価でも計算式が分かれる

相続税の評価でも、両者は別の方法で計算されます。旧法借地権・普通借地権は、自用地としての価額に地域ごとの借地権割合を掛けて求めます(財産評価基本通達27)。これに対し定期借地権は、設定時に借地人に帰属する経済的利益(権利金・保証金の運用益・前払地代など)をもとに、残存期間に応じた割合を掛けて求めます(同通達27-2)。

つまり、借地権割合60パーセントの地域にある借地でも、定期借地権であれば「60パーセント」という数字は使いません。申告の場面でも、契約の種類の確認が出発点になります。具体的な申告方針は、必ず税理士にご確認ください。

想定されるケースで比べる:同じ土地でも価値はここまで違う

前提条件

奈良市郊外の住宅地、土地150平方メートル、更地としての価格を2,000万円と想定します。この土地の上に、次の3種類の借地がある場合を比べます。数値はあくまで考え方を示すための仮定で、実際の価格は個別の契約条件と市場の状況によって変わります。

  • ケースA:旧法借地権。昭和50年代から続く契約で、地代は近隣相場より低め
  • ケースB:一般定期借地権(期間50年)で、残存期間が40年
  • ケースC:一般定期借地権(期間50年)で、残存期間が10年

定期借地権のB・Cは、設定時に借地人が得た経済的利益が更地価格の20パーセント(400万円)相当だったとし、これを残存期間に応じて年1パーセントの利率で割り引いて目安を出します。年1パーセントで計算すると、期間50年の年金現価率は約39.2、40年は約32.8、10年は約9.5です。

比較結果

項目ケースA 旧法借地権ケースB 定借・残40年ケースC 定借・残10年
期間満了後原則として更新更地にして返還更地にして返還
借地権の価値の目安800万〜1,000万円約335万円約97万円
更地価格に対する割合40〜50%約17%約5%

ケースBは400万円×32.8÷39.2で約335万円、ケースCは400万円×9.5÷39.2で約97万円です。ケースAは、借り得の大きさと借地権の取引事例から見た一つの目安です。

同じ土地でも、旧法借地権と残存10年の定期借地権とでは、借地権の価値に10倍近い開きが出ます。これが「契約の種類で価値はここまで変わる」ということの実際です。

残存期間が短い定期借地権では「解体費」が重くのしかかる

定期借地権の場合、期間満了時には原則として建物を取り壊して更地で返す義務があります。木造2階建ての住宅でも、解体費は100万円から200万円程度かかることが珍しくありません。ケースCでは、借地権の価値の目安約97万円に対し、10年後には解体費の負担が控えています。建物の残り10年分の使用価値を加味しても、買い手から見た正味の価値はごくわずか、場合によってはマイナスになり得ます。

定期借地権の売却で押さえておきたい3つの注意点

地主の承諾が必要なのは定期借地権でも同じ

定期借地権も、第三者に譲渡するには原則として地主の承諾が必要です。承諾が得られない場合に裁判所の許可を求める借地非訟の手続き(借地借家法第19条)も、普通の借地権と同様に利用できます。譲渡承諾料の相場や交渉の進め方は「借地の更新料・承諾料はいくら?3つのお金の相場と、合意できないときの進め方」で整理しています。

買い手はローンの期間と残存期間を比べる

定期借地権付き住宅の買い手が住宅ローンを組む場合、金融機関によっては、ローン期間が借地の残存期間内に収まることなどを条件にしています。残存期間が短くなるほど買い手の資金調達が難しくなり、買い手の層が狭まります。売却を考えるなら、残存期間に余裕があるうちに動くことが価格面では有利です。

保証金の返還と、地主への売却という選択肢

一般定期借地権では、契約時に保証金を預けていることが多く、満了時に返還されます。売却時には、この保証金の返還請求権を買い手に引き継ぐのか、精算するのかで手取りが変わります。また、第三者への売却が難しい場合には、地主に借地権を買い取ってもらう、あるいは契約の合意解約で早期に返還するといった選択肢もあります。地主と借地人の双方が得をする形の整理については「底地と借地権は同時売却で高く売れる?増えた分の分け方と等価交換という選択肢」もご覧ください。

奈良で借地の種類を確認すべき場面

旧市街・寺社地の借地は旧法借地権が中心

ならまちや大和郡山市の旧城下町、今井町周辺など、古くからの市街地に残る借地の多くは、昭和以前に設定された旧法借地権です。また奈良では寺社が地主となっている借地も少なくありません。こうした借地は旧法の強い保護を受ける一方、地代改定や承諾の運用に独特の慣行があります。詳しくは「奈良の借地権・寺社地借地の評価で、気をつけるべき3つのこと」で解説しています。

郊外の分譲地・ロードサイドでは定期借地権が使われている

平成以降に開発された郊外の住宅地では、土地の購入費を抑える目的で一般定期借地権付きの分譲住宅が供給された例があります。また国道24号・168号などの幹線道路沿いでは、地主が土地を手放さずに店舗用地として貸す事業用定期借地権がよく使われます。平成10年代に設定された一般定期借地権は、相続が発生する頃には残存期間が30年を切っていることも多く、価値の見積もりに注意が必要です。

相続・遺産分割の前に契約書を確認する

借地上の建物を相続したら、まず契約書の締結日、借地権の種類、存続期間、地代、保証金の有無を確認してください。契約書が見当たらない場合は、地主側の控えや地代の領収書、建物の登記の日付から手がかりを探します。遺産分割では、相続税評価額ではなく分割時点の時価を基準に話し合うことになりますので、権利の種類を取り違えると代償金の額が大きくずれます。

まとめ

旧法借地権と定期借地権は、どちらも「他人の土地に建物を持つ権利」ですが、期間が来ても続くのか、必ず終わるのかという一点で、価値がまったく異なります。要点を振り返ります。

  • 平成4年7月以前に設定された借地は、更新後も旧借地法が適用される旧法借地権で、正当事由がなければ地主は更新を拒めない
  • 定期借地権は一般・事業用・建物譲渡特約付の3類型があり、いずれも更新がなく期間満了で終わる
  • 不動産鑑定評価基準は、借地権の態様や残存期間を価格判断の重要な要素としている
  • 相続税評価でも、旧法・普通借地権は借地権割合(通達27)、定期借地権は残存期間に応じた計算(通達27-2)と方法が分かれる
  • 想定ケースでは、同じ土地でも旧法借地権と残存10年の定期借地権とで価値に10倍近い差が出る
  • 定期借地権は残存期間が短くなるほど、解体費の負担とローンの組みにくさで売りにくくなる

奈良県内の借地上の建物を相続された方、借地権付きの家の売却や購入を検討している方、そして相続人の間で借地の価値をどう見るかで話がまとまらない方。まずは契約の種類と残存期間を確かめ、その権利が実際にいくらなのかを客観的な根拠で押さえておくことをおすすめします。

奈良県の借地の評価でお悩みの方は、奈良出身の鑑定士による初回無料相談をご利用ください。借地の権利関係については借地権・底地の評価、相続に伴う評価全般は相続のための鑑定をご覧ください。ご相談はお問い合わせから承ります。

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この記事を書いた人

吉田 健人代表取締役・不動産鑑定士

株式会社KRE Appraisal代表。相続・離婚・借地・賃料など、価格が争点になる場面の鑑定評価を扱う。不動産鑑定士(登録 第11191号)。

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